B級科学者たる私のやるべきこと
私は獣医師ではありますが、生業はデスクワークのサラリーマンであり、診療や研究で生計を立てているわけではありません。
所詮私は素人以上学者未満の知識しか持ち合わせおらず、よってあくまで「B級科学者」と名乗っております。
そんなB級の立場で常々思うのは、A級科学者と一般競馬関係者(ファン、馬主層、生産者を含む)との間では科学に対する知識や認識がかなり乖離していて、
溝が深いということです。生産者の方々に伺ったところでは、例えば、近親交配のリスクといった「遺伝の概念」について、ほとんど生産地では講習が行われていないようで、
少々(というよりかなり)驚いています。
ディープインパクトの来年(2018年)の種付料が4000万円ということで話題ですが、種牡馬ごとの値段の差は、
生産者や購買層が各々の種牡馬の間には遺伝子の質に差があると信じているからです。つまり、
サラブレッドの質を左右する「血統」とは、「遺伝」という科学的事象の上に成り立っていることを誰もが理解しているのですが、
依然、誤解や迷信が少なくないようで、私としてこのような状況を看過し続けていいのかと日々悶々とした気持ちにとらわれています。
生産地では著名な研究者や先生方の各種講習はしばしばあるようですが、本当にそのようなかなり高度で専門的な講習が必要なのか?
もう少し基本的なことを忘れてないか? と思うこともあります。
「なぜ極度の近親交配はリスクが高いのか?」
その科学的理由は、高校の理科(生物)をきちんと勉強していれば理解できていて当たり前かもしれません。しかし、残念ながら、
その科学的理由をきちんと理解している競馬関係者はかなり少ないのが現状のようです。JRAを含む競馬の各種団体は、
その「当たり前」のことは当然に認識されているという前提に全てが基づいているような気がしてならないのです。
「なぜ芦毛と芦毛の両親からも鹿毛や栗毛が生まれるのか?」
JRA等の組織に籍を置くA級科学者たちは、このような「基本」の話を素通りして、小難しい話ばかりを生産界を含む競馬サークルに説いてはいないでしょうか?
このようなことから、A級科学者と競馬サークルの橋渡しが、B級科学者の私がやるべき使命だと考えているのです。
(2017年12月3日記)
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