特定の牝系が優秀であることへの科学的探究

一部の牝系が特に優秀であることについて、拙著中で私は以下の2つの科学的仮説を掲げました:

@その系統のミトコンドリア遺伝子が「エピジェネティックな外的因子」に反応してスイッチオンとなった。
Aその系統では何らかの理由で代々母系由来の染色体上の遺伝子だけが「エピジェネティックな外的因子」に反応してスイッチオンとなる。

しかし@については、果たしてミトコンドリアの遺伝子にこのようなエピジェネティックな変化が入りうるのか、まだまだ分からない部分ばかりであり、 何人かのエピジェネティクスの専門家の先生方に僭越ながら質問の手紙を書きました。

その中で、この分野の権威者の一人である大阪大学大学院医学系研究科の仲野徹教授よりご丁寧なご返事を頂戴しました。仲野教授によれば、 ミトコンドリアDNAはきちんとしたクロマチン構造ではないこと、そこに存在する遺伝子は常に発現していなければならないものばかりであること等の理由から、 エピジェネティックな制御を受けている可能性はほぼないのではないかとのことでした。頂戴した回答の内容は残念ではありましたが、 このような高名な先生から直々にご返事を頂戴したことに私として非常に恐縮するとともに、この場を借りて改めて御礼申し上げます。

ところで、ミトコンドリア遺伝子の進化は核の遺伝子よりもかなり速いということから、私は、特定の牝系にそんな進化(変異)が働いたという仮説もありうるかと新たに考え始めたところです。 いま「ミトコンドリア」や「エピジェネティクス」に関するいくつもの文献を継続的に読み込んでおりますが、 同時にこれからもその道の専門家の先生方に質問の手紙を継続的に出していきたいと思っております。

参考まで、上述の仲野教授は早川書房より今月発刊された『遺伝子‐親密なる人類史‐』(著者シッダールタ・ムカジー)の監修者でもあります。 ちなみにこの本の著者はインド人の医師ですが、遺伝科学の変遷やその真髄に対する造詣の深さに驚きます。 私自身、まずは上巻を読み終えましたが、ダーウィン、メンデル、ド・フリース、モーガン、マラーといった先人の功績を再認識する一方で、 ナチスが遺伝学を歪曲し民族浄化の道具とした負の歴史も再認識したところです。

(2018年2月25日記)

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