Sadler's Wells と El Prado の親仔関係を疑った顛末

以前私は Sadler's Wells と El Prado の親仔関係を疑いました。これについては拙著に詳述しましたし、 その前に2014年秋に発刊された『サラBLOOD!』(vol.3)に掲載した『芦毛の El Prado は本当に Sadler's Wells の仔か??』にも書いたとおりです。

顛末の詳細はここでは書ききれませんが、端的に述べますと、2013年の北米リーディングサイヤーである Kitten's Joy の5代血統表を眺めていたところ、 2002年の北米リーディングサイヤーの El Prado の仔であるにもかかわらず栗毛だということに「あれ?」と思ったのが始まりでした。 El Prado は芦毛であること、その父の Sadler's Wells は仔に栗毛が1頭もいないことから(鹿毛遺伝子をホモで保有)、 「辻褄が合わない!」と思ってしまったのです。

結論として親仔関係に問題はなく、これは私の不勉強が原因でした。私は栗毛遺伝子と芦毛遺伝子が別々の染色体上にあることを知らなかったのです。 あの時は、それを公に指摘したらどうなってしまうのだろうかと真剣に考えました。「私の身は危ない……」と本当に体が震えましたし、 「そんな危険なことは絶対にやめて!」と家族に訴えられたこともありました。今では完全に笑い話ですが……!

想像もしてみて下さい。El Prado も Kitten's Joy も共に北米リーディングサイヤーに輝いているのです。これら各馬の血が入った馬の血統は全て誤りだった、 なんてことになったらどうなるでしょう? 損失する資産価値の合計は想像を絶します!!

いやぁ、単に私の不勉強が原因と分かった時は、不本意ではあったものの、心底ほっとしました。ちなみに『サラBLOOD!』(vol.3)の私の記事に出てくる 「血統研究家のYさん」とは吉沢譲治さんです。

ところで、幸い私は個人的に懇意にさせて頂いている生物学者や競馬関係者がいるので、このような疑問も解決することができましたが、 一般のファンの方々がこのような疑問を持ったらどうするのでしょうか? 誰に相談したらいいか分からなくなってしまうと思うのです。 私は、そんな方々の相談相手になれたら嬉しいなと常々思っているのです。但し、誤解しないで頂きたいのは、私は自称「B級科学者」であるように、 ハイレベルな疑問には対処しきれないかもしれません。そのときは、そんな疑問を一緒に考えてさせて頂きたいし、 そのようにしていくことで私個人の勉強にもなると思っているのです。

(2018年3月18日記)

戻る