本庶佑氏のノーベル賞受賞に思ったこと
母系の重要性を説いている私は「エピジェネティクス」がキーファクターの1つだと思っています。
以前、この分野の権威である大阪大学大学院の仲野徹教授に僭越ながらも科学的質問の手紙を出し、丁寧なご返事を頂戴したのですが、
今回、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏は仲野教授の恩師とのことで、私も嬉しくなってしまいました。
ところで、本庶氏の「科学誌の9割は嘘」という発言について、この言葉をそのまま鵜呑みにする輩がいたとしたなら通訳が必要だなと思いました。
私が血統や配合を言及する際に常々力説する「メンデルの法則」が発見されたのは約150年前です。これには3つの法則があり、
その中で「分離の法則」は依然普遍性があるのですが、「優性の法則」と「独立の法則」には例外もあることがのちに判明しました。
例えば「優性の法則」ですが、メンデルは豆の色が黄色のエンドウと緑色のエンドウを掛け合わせ、得られた次世代および次々世代のエンドウを観察しました。
すると、中間の色のものはなく、黄色のものが所定の高確率で出ることを発見しました。
しかし、マルバアサガオにおいては、花の色を赤くする遺伝子と白くする遺伝子は優劣の関係になく、この双方が揃った場合は中間の桃色になるのです(不完全優性)。
また、人の血液型において、A型遺伝子とB型遺伝子も優劣の関係になく、両方保有した場合は共にその形質を主張し合ってAB型となります(共優性)。
新たな時代における新奇な発見は、時には既存の事実を補足するかたちで、時にはそれを完全に覆すかたちで、その価値が認められるのです。
また、最新の科学的事実とは、現時点で否定する根拠が見出せない「仮説」を意味します。
掲げた仮説を否定する試験を繰り返したものの、どれも空振りに終わったときに、あくまでその時点(時代)における科学的事実として確立するのです。
ちなみにこのあたりの話は『科学の罠』(長谷川英祐 青志社)に詳述されています。
このように、「科学」とは日進月歩であるということ、つまり昨日までの事実は今日の新しい発見により覆されることの繰り返しであるということを、
本庶氏はおっしゃっているのです。
今回の本庶氏の言葉に、「なぜ?」と疑問を持つことの大切さを再認識させられました。
先日、或る血統理論を読んでいたら、具体的根拠も示さずに論者自らの考え方についてそれを「ルールである」と言い放っていましたが、
これは中小企業のワンマン社長が「俺が右と言ったら右なんだ!」と言っているようなものです。
これにはさすがに唖然としましたが、それ以上に、疑問を投じることなくこのような理論を信じた者も多かったらしいということに改めて私は驚き、
サラブレッドの血統の世界の闇の深さも再認識したのです。
(2018年10月6日記)
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