求む校閲ガール!

ふと、何気なく拙著『サラブレッドの血筋』(第2版)をパラパラと眺めていたら、また誤記を見つけました。 26頁の小見出しですが、以下のとおり初版から修正が漏れておりました。

(誤)インブリー効果の統計解析
(正)インブリード効果の統計解析

気づいた誤記は こちら です。ここに掲載している Fine Top の生年と Fast Fox の生年の誤りは、 ちょっと言い訳になりますが、1979年に発行された『サラブレッド種牡馬系統譜』を転載した結果であり、つい最近まで私は、 日本中央競馬会という権威ある組織(?)が発行したこの書物に記載のものはそのまま信じてしまっていたのです。

石原さとみさんが主演の『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』というドラマがありました。 出版社における校閲業務を面白おかしく描いたものですが、とても興味深かったです。 きちんとした出版社から発行される書籍であれば確かな校閲作業を経るはずですが、 いかんせん拙著は全て私独りでやっており、どうしても自分で書いた言葉や文章は変な意味での「慣れ」があり、 なぜか誤記を見落としてしまうことがあります(再び言い訳……)。

よって、校閲というものは本来、他者にやって頂くべきものであるということを痛感します。 しかし、ぎりぎりの時間と予算で作成している拙著ですので、そこの部分は大目に見て頂き、気づいた点があれば随時ご連絡を頂戴できれば嬉しいです。

ちなみに馬の毛色なのですが、日本で言う黒鹿毛と青鹿毛は海外では区別がなく、brown または dark bay です。 また海外では栗毛と栃栗毛も区別なく chestnut ですので、拙著の樹形図において栗毛と記載していた海外の馬が日本に輸入されたら栃栗毛と登録される例もあります。 毛色表記についてはこのように柔軟性があることもご理解下されば幸いです。

ところで、「校正」とは誤字脱字の修正がメインですが、「校閲」とはその内容の矛盾や事実関係の誤りもきちんとチェックすることまでを通常は意味します。 それを思うと、競馬関連本に書かれている配合に関する論述の大半は生物学から逸脱しているので、そういう意味での校閲を経たならこれらは残念ながらアウトでしょうね。

いま発売中の『優駿』2019年5月号の「合田直弘の海外競馬掘り出しエピソード」ですが、ロイヤルゲイトがGIゴールドCで失格処分となった記述で、 「馬主がスペイン人で、調教師が仏国に拠点を置く豪州人で、騎手が米国人だから、英国人裁決は厳しい対応をしたなどという、穿(うが)った見方すらされたほどです」 とありました。先日見たバラエティ番組では「穿(うが)つ」の意味を正しく理解している人は少ないとのことであり、手元の辞書によれば、この言葉の意味は 「物事の真相や人情の機微をしっかりととらえる」であって、「深読みしてツボをはずす意で使うのは誤り」とあります。

実は私もそのように理解していたひとりであり、また言葉の意味は時を経て変化するものでもあり、自分も適切でない言葉遣いをしていることはあるはずなので、 つまらないツッコミをする気持ちはさらさらありません。そんなことしたら、ブーメランのごとく自分に突き刺さります(笑)。 ただ、上述のような例を見ると、「校閲」という作業の重さをあらためて痛感するわけであり、来年の発行を目指している拙著『サラブレッドの血筋』(第3版)に対しては、 今一度、ふんどしを締めて掛かりたいと思います。

(2019年5月8日記)

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