その交配は全く狂気ではない

ニシノフラワーが死んだとのこと。1992年の桜花賞の乗り替わりは、とても感慨深いものがありましたね……。 ところで、今般の死亡記事を見て、ふと、 西山茂行氏の 「狂気の交配から16年」と題されたこちらのブログ を想い出しました。

「やっぱりニシノフラワーの血統でもセイウンスカイが入るとダメか?」

ブログの中で西山氏はこのようなことを思われた旨を書かれていますが、多分、外野からも色々なことを言われたのでしょう。 ニシノデイジーのような活躍馬が出てほっとしたであろう心境は容易に察することができます。 しかし、西山氏自らに 「狂気」 と言わしめるような競馬サークルの空気、つまり、 個々の牝馬の血統背景も精査することなくごくごく特定のブランド種牡馬ばかりに人気が集中することこそ、私は紛れもない 「狂気」 だと思っています。

現在、洋の東西を問わず大きな社会問題となっている新型コロナウイルス感染症。 案の定、マスクの買い占めによる品切れが続出のようですが、しかし、マスク着用の主な効果は感染者からのウイルス飛散防止であって、よっぽど特殊なマスクでない限り、 予防効果はあまり期待できないとされます。「ほかの人にうつしちゃったら申し訳ないから何が何でもマスクをしなきゃ!」 というような殊勝な人は、マスクを血まなこになって買い漁っている人の中では残念ながら稀有でしょう。 ちなみに、われわれの世代だと、オイルショック時のトイレットペーパーの買い占め騒動を想い出した人も少なくないかもしれませんね。

マスクをしないよりした方が多少でも予防効果はあるのかもしれません。 一方、ここで馬の話を引き合いに出すのもなんですが、評価の高い(=種付料の高い)種牡馬を選んだ方が良い仔を得られるかもしれません。 しかし、いずれの場合も、問題はその 「過信の程度」 です。インフルエンザやコロナのウイルス感染に対する本来の予防は、正しい手洗いに始まって、 バランスの取れた栄養ある食事や十分な休息(睡眠)という健全な日々の生活の実践です。 にもかかわらず、これだけ猫も杓子もマスクに飛びつけば、「マスクさえすれば大丈夫」 という安直短絡的な思考もいたるところで生まれてしまっているのではないでしょうか?

今般のマスク買い占め騒動について、コラムニストの小田嶋隆さんの昨日のブログ 「ニュースを「マスク」する効用について」 を読みましたが、 脊髄反射的に深く深く頷いてしまいました。

一昨日開催された社台SSの種牡馬展示会。今年も熱い視線が特定の種牡馬たちに集中した様子は、ネットや SNS での各種レポートで垣間見ることができます。 ここで不意に私は、「マスクさえすれば」 と 「良い種さえ付ければ」 は本来は全く無関係の話ではあるものの、全く同じ発想のような気がしてしまったのです。 世の人々が不安に駆られてマスク入手に猪突猛進するありさまと、配合の在り方は二の次に特定の種牡馬ばかりに群がる競馬サークルの情景とが、 思わず私の脳細胞の上で交錯してこんがらがってしまったわけです。

そんな交錯がアルツハイマーの前兆でないことを祈るのですが……。

(2020年2月8日記)

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