クロフネの芦毛産駒は走る??
前回の「テスコボーイの栗毛産駒は走らなかった??」の続編です。
クロフネはご存知のとおり芦毛です。芦毛を誘発する遺伝子を通常「G」と呼びます。
Gの対立遺伝子は「g」であり、メンデルの「優性の法則」に基づき、Gはgに対して優性(顕性)です。
各馬の遺伝子型はGG、Gg、ggのいずれかになり、遺伝子Gを1つでも持てば芦毛になるので、芦毛馬の遺伝子型はGGかGgであります。
遺伝子型がGGの芦毛馬の場合、その仔には必ずGを授けるので、産駒は全て芦毛になります。ラナーク、ゼダーン、メンデスなどがその例です。
ちなみに遺伝子型GGの馬は父と母の両方からGをもらっているので、両親ともに必ず芦毛です。
一方でクロフネは、片親が非芦毛であることや産駒に鹿毛や栗毛がいることから、その遺伝子型はGgであると断定できます。ゴールドシップもそうです。
また、両親とも芦毛であるものの産駒に非芦毛がいるのでオグリキャップもGgです。
遺伝子型がGgの芦毛馬が非芦毛馬と交配した場合、生まれてくる仔の毛色の確率はメンデルの「分離の法則」により芦毛:非芦毛=1:1です。
ところでクロフネの場合、活躍する産駒は芦毛が多いように思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今「JBISサーチ」で検索してみると、クロフネ産駒でJpnを含むGV以上の勝馬は、芦毛12頭、非芦毛7頭となっています(白毛は特殊な遺伝様式なのでユキチャンは除外)。
遺伝子のGもgも決まった染色体の上に存在しますが、その染色体にはこれらの遺伝子以外に色々な遺伝子が混在しています。
よって、もしも、遺伝子Gを搭載したクロフネの染色体に優秀な競走能力を惹起する遺伝子も存在していたなら、
芦毛のクロフネ産駒は相対的に優秀ということになります(遺伝学で言う「連鎖」)。しかし、あくまで上記の様子(サンプル数)からは、
クロフネ産駒の毛色と成績の相関性を論じることにあまり意義はないでしょう。どうしても芦毛は視覚的にも目立つので、その活躍が印象に残るのですが。
蛇足ですが、上述の「連鎖」の例として、人のABO式血液型と性格の相関性があるのかないのかが昔も今も議論になっています。
A型はこういう性格、B型はこうだ、というような4つのパターンに無理矢理当てはめたり、星座と絡ます占いのようなのは全く論外ですが、
血液型を決定する遺伝子が載っている染色体に、性格に多少なりとも影響する遺伝子が全くないとは言い切れないのも確かです。
更に言えば、人のダウン症は21番染色体が3本存在することが原因ですが、ダウン症の人たちは世界共通に似たような顔だちをしていることから、
この21番染色体には顔だちに影響する遺伝子が存在すると考えられており、これも広い意味で「連鎖」と言えるでしょう。
(2018年5月2日記)
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