国際化はまだまだ道半ば(その2)
昨日の帝王賞、ゴールドドリームが勝ち、或る記事には「GI4勝目」と書かれていました。
しかし、このうちの2つは国際格付のないJpnIであり、この馬の海外での認識はあくまでGI2勝です。
一昨年のチャンピオンズカップはサウンドトゥルーが勝ちました。この時の実況アナウンサーは「念願のGI制覇」のようなことを言っていましたが、
この馬は既に、地方競馬では唯一国際GIの格付を得ている東京大賞典を勝っているので、正しい表現ではありませんでした。
80年代半ば、JRAはグレード制を導入しましたが、これは日本独自のものでした。バブル全盛の当時、国内の「ジーワン競走」は非常な盛り上がりを見せましたが、
あくまで「日本のジーワン」に過ぎませんでした。そんな中、一定の要件を充たしたレースは国際GIの格付を得られ、日本のレースでは1992年のジャパンカップが最初の例となり、
これに勝ったトウカイテイオーは日本産で初めての「国際GI馬」となりました。
日本ダービーの場合、国際格付を得たのは2010年であるため、ディープスカイ、ロジユニヴァース等は海外において「GI馬」とは見なされません。
拙著『サラブレッドの血筋』のファミリーラインの樹形図の掲載対象はあくまで「GI馬」であるため、これら各馬は残念ながら掲載しておりません。
なお、国際格付前の日本ダービーを勝った馬でも、メイショウサムソン、ウオッカ等は国際格付を得たGIレースを別途勝っているので、樹形図に掲載しています。
確かに国内でのグレード制の導入は、ファン獲得や競馬文化の発展には大きく貢献したことは確かでしょう。その一方で、海外から独立した格付なので、
「ジーワン」の安売りをしているかのような気がしたのも確かです。
日本で「銀座」と言えば有楽町横の一角を言うが通常です。しかし、国際格付のないレースをいまだ「ジーワン」と呼び続けるのは、戸越銀座商店街の店主たちが
「うちの商店街も立派な銀座だ!」と声高に叫ぶようなものです。(戸越銀座商店街の皆様、ごめんなさい! 私はざっくばらんなあの雰囲気は大好きです!!)
今回の帝王賞の記事に見るように、メディアが誇張して書きたい気持ちは分かります。けれども、海外から「ゴールドドリームはGI4勝ではなく2勝では?」と言われた場合、
的確に回答ができるでしょうか?
中央&各地方という多重構造の主催者、更にはメディア、ファンを含めた日本の競馬界は、今回のような事例に対して足並みをそろえた上で、
真の国際化をもっと踏み込んで考えていくべきだと切に私は考えます。
(2018年6月28日記)
「国際化はまだまだ道半ば(その3)」に続く
戻る