配合コンサルタント
以前、「コンサルタントはやらないのですか?」 と生産者から言われたことがあるのですが、「無理です」 と答えまました。少なくとも現時点では無理ですね。
生産者向けのコンサルティングというと、@新たな繁殖牝馬の導入検討時や、A交配種牡馬選択におけるアドバイスがメインと思います。
母系の重要性を説いている身としては、@についてはそこそこ有用なアドバイスはできますが、Aはちょっと難しい。
特に中小牧場に対しては、牧場存続さえも左右しかねない交配種牡馬選択に、安直なアドバイスなど恐れ多くてできないからです。
本気でコンサルティングをするのなら、特にマーケットブリーダーを相手にするのであれば 「売れる馬」 が大前提ですので、
鋭敏な感覚で人気系統のトレンドに対するアンテナをしっかり張り、最新情報の収集は日々怠ることはできません。
一方で、ご存じのとおり、別途私はしつこいまでに現在の生産界における遺伝的多様性低下の問題を論じていることもあり、
これを避けるようなアウトブリーディングの配合を個人的に薦めたくなるでしょうが、対価をもらってコンサルをするならば、
マーケットブリーダーにはその気持ちは無理矢理でも抑えねばなりません。
いや、待てよ、自分の性格ならそんな気持ちは抑えないかもしれませんね。
きついインブリーディングばかりに傾倒する生産者には、「近交弱勢」 の怖さなどの講釈を延々と垂れてしまうかもしれず、するとやはり、
そんな私にはそう簡単には顧客などつかないのでしょうね……。
いずれにしても、コンサルティングで報酬をもらうということは、最近の血統トレンドのみならず、「遺伝」 に関する最低限の知識を持っていることが必要条件だと思っています。
前回 書いたとおり、今般市販誌に一本寄稿したのですが、その中にも、依然として未知な部分ばかりなのが 「遺伝」 だと述べました。
未知、つまり日進月歩だからこそ、生物学的側面からの一定の科学的知識も常にアップデートせねばならないわけです。
このようなコンサルタントが現在どの程度いて、どのようなアドバイスをしているのか? その料金体系はどのようなものなのか?
これらについては私は全く存じ上げないのですが、もし、
既にコンサルタントとお付き合いがある、または新たなコンサルティングを受けようと思っている生産者の方々は、
先ずそのコンサルタントに、遺伝の基本原則たる 「メンデルの法則」 を知っているかを尋ねてみて下さい。
以前、競馬界で著名な大御所の血統論者とメールのやり取りをした際、話が噛み合わないことがあったのですが、
その遺伝の基本原則を理解されていないことに驚愕したことも思い出しました。
さらに、「芦毛と芦毛の両親からもなぜ鹿毛や栗毛が生まれるのか?」 「栗毛(栃栗毛)と栗毛の両親の仔はなぜ全て栗毛なのか?」 についても質問してみて下さい。
これに即答できないコンサルタントであれば、即 「さよなら」 を言った方が無難です。
今回、この話を書いたのは、実はドバイの生産者から、「新たに牝馬を購入したので、交配種牡馬の選択についてコンサルをしてほしい。料金はいくらだ?」
と言われてしまったのです。
現地種牡馬のリストもない雲をつかむような話でコンサルなどしようがなく、あくまで私は血統を探究する科学者に過ぎないと遠回しに断りました。
オイルマネーのおこぼれを少しは頂戴したいなとは思ったのですが(笑)。
それでもどうしてもアドバイスが欲しいと言われ、確かにこのような私を有用に思って下さることは非常に有難い話であり、
とりあえず種牡馬5頭をピックアップしてもらい、その中で私なりに検討のうえで今晩にでも返答することにしています。
まあ、こんな私を頼りにして下さる方が他国にもいるということは本当に嬉しい限りですが、真剣に対応しようとすれば、どこまで真剣に対応すべきかも分からなくなります。
そういう意味では、どの業界でもコンサルタントという仕事は、あまり深くは考えずに先ずはクライアントに納得頂く提案をすることが肝要なのかもしれませんね。
ちなみに、そのドバイからのコンサル依頼の内容は、父 Kingman、母の父 Pivotal、ファミリーナンバーは 3-c の牝馬に対してどの種牡馬が良いかとのこと。
どの種牡馬が良いですか?
(2020年11月8日記)
戻る