近親交配(インブリーディング)とは何か?(その2)
近親交配(インブリーディング)を詳細に説明しようとすると際限なくなるのですが、前回 の補足をさせて頂きます。
前回言及した「・」という記号を用いれば、ラッキーライラックの場合は「ノーザンテースト 4・5 Mr. Prospector 5・5」となりますが、
そもそもがこれらのインブリード効果は皆無ですので記載は不要です。つまり、この馬の場合は「5代前までインクロスなし」と表記するのが適切です。
ここで今年の宝塚記念を勝ったミッキーロケットの5代血統表をご覧下さい
(リンクの『JBISサーチ』では父方は「S」、母方は「M」が付記されています)。Mr. Prospector の3×5、Nureyev の4×4のインクロスは明快ですが、
解読が難しいのが Northern Dancer であり、5代血統表の中には以下のとおり4箇所出てきます。
@ 父方の Nureyev の父として
A 父方のトライマイベストの父として
B 母方の Nureyev の父として
C 母方の Nijinsky の父として
まず@を中心に考えて下さい。@から見るとAは同じ父方なので考慮対象外であり、Bとの関係も既に Nureyev において考慮済みなので対象外です。
よって、@から見るとCとの間の5×5のみ考慮します。
次にAを中心に考えてみましょう。これはBおよびCに対して各々独立したインクロスがあります。つまり5×5が2つ存在するのです。
次にBを中心に考えると、Cは同じ母方なので考慮対象外です。
従って、ミッキーロケットにおける Northern Dancer のインクロスは5×5が3つあるということになります。
以上をまとめれば、ミッキーロケットの5代前までのインクロスの状況は以下になり、遺伝学における「近交係数」はこれらを合算した値になります。
Mr. Prospector 3×5 Nureyev 4×4 Northern Dancer 5×5 5×5 5×5
ミッキーロケットの例のように、インクロスする祖先の馬が複数あって、その馬同士が親仔関係にある場合や、同じ馬が血統表の中に3箇所以上出現している場合は、
解読が難しいことは確かです。しかし、サラブレッドの配合を真摯に検討するのなら、上述の解読は必須であります。
(2018年7月18日記)
「近親交配(インブリーディング)とは何か?(その3)」に続く
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