今年のノーベル生理学医学賞の受賞者

今年のノーベル生理学医学賞は、絶滅したネアンデルタール人の遺伝情報の解析を含めて、人類の進化に関する研究で大きな貢献をもたらしたとして、 スウェーデン出身の遺伝学者であるスヴァンテ・ペーボ氏に授与されることになりました。 その人物像および業績は、ウィキペディアによれば こちら のとおりです。

ところで、ペーボ氏の生い立ちが書かれた「母子家庭の夢から生まれたノーベル賞」 と題された記事は非常に興味深いものがありました。 父親はプロスタグランジンの研究で名を馳せた生化学者で、1982年にノーベル生理学医学賞を受賞したべリストームであり、 同じ賞の親子受賞という素晴らしい快挙なのですが、上記の記事にあるとおり、ペーボ氏は、べリストームと愛人の関係にあった女性との間に生まれた婚外子なのです。 母子家庭で育ったそんな生い立ちながらも、当然ながらノーベル賞学者たる父の遺伝子の半分をもらっているわけで、 この記事にある「カエルの子はカエル、息子はやはり父親の子でした」のくだりには唸るものがありました。

ここで、ちょっと不謹慎と言われてしまいそうですが、今般のペーボ氏の生い立ちから、「ウォーエンブレムに教わった愛の結晶のかたち」 に書いたことを思い出してしまいました。 つまり、英オークスで2着となり通算で11勝した牝馬シニョリーナ(Signorina)と無名種牡馬シャルールー(Chaleureux)がお互いに惹かれ合って心酔状態になり、 そこから生まれたシニョリネッタ(Signorinetta)は 1908 年のイギリスのダービーとオークスに勝ってしまう話と、 スイスのベルン大学での実験において、人間の女性は、 自分の(俗に恋愛遺伝子と呼ばれる)HLA 遺伝子と最も異なる型の HLA 遺伝子を持った男性の匂いに魅力を感じるという結果になった話です。

すると、「ベスト・トゥ・ベストの配合はベストなのか?」に書いたように、 深慮なく名種牡馬と名牝を交配させればいいという単純なものではないということをあらためて思い知らされるのです。

人間の夫婦の場合、家柄や収入といった打算による相手選びや、好きも嫌いもあったものではない政略結婚の結果など、 「本当の愛」に乏しいケースが一定の割合で存在するでしょう。 その一方で不倫の場合は、本能的に、つまり生物(「なまもの」と読んだ方がいいかも) としてのありのままの感情と感情がダイレクトに惹かれ合った「男と女」が全てですよね。

若い未婚の男女の皆さん、将来結婚して、健康で賢い子をもうけたいと思ったならば、本当に好きになって心底愛した相手を選ぶべきですよ…… などと、今年のノーベル賞受賞者の生い立ちから思ってしまったオジサンでありました。

なお、ペーボ氏の科学者としての真摯な姿は こちら の記事のとおりで、本当に素晴らしいです。 また、沖縄科学技術大学院大学の客員教授でもあり、日本人としても何か嬉しくなってしまいます。

(2022年10月9日記)

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