執筆の途中経過(その3)
年末年始は執筆依頼を受けている原稿に可能な限り時間を割き、先日、とりあえず全体を書き上げました。
まだ若干ラフな部分もあり、言い回しが重複している箇所などもあることから、編集者の指摘を受けながら全体を再確認し、
掲載したデータなどのファクトチェックや挿入図の詳細について詰めていきます。
そんな原稿作業の中で、いろいろと感じたことを今回は雑談半分に記したいと思います。
今般の執筆原稿では「隠し味のような血の意義」に書いた話を練り直して挿入しており、
つまりクロフネについて触れる箇所があり、この馬の購買経緯などの裏を取るために『優駿』の2002年2月号を取り寄せました。
そこにある「クロフネ引退特集 栄光の蹄跡と種牡馬としての可能性」という記事を見たかったのですが(こちら)、
なんとこれは吉沢譲治さんが書いた記事だとは驚きました。ちょっと話がそれますが、吉沢さんの話は こちら に書きました。
クロフネが日本の生産界の血統地図をそこそこ塗り替えたのは言わずもがなでしょう。
「隠し味のような血の意義」に書いたことを繰り返しますが、どんなに馬体や身のこなしが素晴らしくとも、
母の父がまったく無名である血統背景の馬が仮にセレクトセールのようなところに登場しても、
そこに触手を伸ばすバイヤーはどれだけいるのだろうかと思ってしまうわけです。
話は変わって、アーモンドアイが第2仔を産んだニュースが入ってきました。
初仔は父エピファネイア、そしてこの第2仔は父モーリスであり、言わずもがながですが、どちらもサンデーサイレンスの3×4です。
確かに、デアリングタクト、エフフォーリア、サークルオブライフ、ソングライン、ジェラルディーナ、ドゥラエレーデというGI馬はサンデーの3×4ですが、
現在の日本の生産界におけるサンデーの3×4馬の量産は金太郎飴のごとくすさまじいものがあり、これだけの数ですから当然にその中からは一定数の優秀馬は誕生します。
しかし、その遺伝子プールのいびつさが惹起するリスクは「バイアスのかかった遺伝子プール(その6) 」などに書いたとおりであり、
このあたりの警鐘は今般の原稿においてもきっちりと鳴らします。
警鐘という意味では、これも繰り返し指摘してきた血統理論における疑似科学の問題があり、この件も今般の原稿では詳述しました。
ところで、今日の競馬中継を観ていたら途中で、顔の肌の水分量を保つ旨を謳ったコラーゲン飲料のCMが流れました。
こちら は生物学者の福岡伸一先生の『新版 動的平衡』(小学館新書)ですが、ここに書かれているとおり、
コラーゲンをいくら飲んでも食べてもコラーゲン不足を補うことにはならず、コラーゲン配合化粧品を顔に塗っても皮膚からコラーゲンは吸収されないということです。
日々あらゆる分野で、われわれは迷信や誤解、つまり疑似科学に翻弄されているのです。
さあ、原稿は最終仕上げにラストスパートです。
(2023年1月22日記)
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