遺伝学的にも興味深いシラユキヒメの白い一族(その8)
今回は、3月に書いた「遺伝学的にも興味深いシラユキヒメの白い一族(その7)」の続編です。
先々週のアルゼンチン共和国杯を快勝したハヤヤッコ。
スタートから第4コーナーまでしんがり追走も、直線はじりじりと進出して差し切り、まさしくいぶし銀のような勝ち方でした。
一昨年の重馬場の函館記念を勝ったときの走りも印象的でしたが、
あらためて今般のアルゼンチン共和国杯は、8歳という年齢も感じさせずトップハンデをものともしない姿は感動ものでした。
個人的に、ハヤヤッコは種牡馬になってもらいたい馬の筆頭です。その想いの理由には、この馬が白毛であるということも確かにあります。
シラユキヒメから継承するハヤヤッコの白毛は顕性(優性)白毛と呼ばれ、メンデルの「顕性の法則」に基づいて他の毛色の遺伝子に対して顕性の作用を示し、
非白毛の牝馬と交配した場合に、メンデルの「分離の法則」に基づきその産駒に白毛が出る確率は50%です。
これは「「メンデルの法則」とは?」も参照ください。
ただし、私がハヤヤッコにスタッドインしてもらいたいと思う真の理由は、その白毛産駒を見たいというのとはちょっと違います。
「遺伝学的にも興味深いシラユキヒメの白い一族(その2)」に書いたことが、種牡馬ハヤヤッコの誕生を切に願うことに関係します。
芝とダートの双方での実績。ずぶくもじりじりと詰め寄るしぶとさ。そこにはシラユキヒメから継承した白毛遺伝子とは違う遺伝子の貢献もあるのではないか?
その遺伝子は、ハヤヤッコ自身の細胞において、白毛遺伝子が載る染色体上に同居しているのかもしれないものの、
しかしハヤヤッコの生殖細胞(精子)がつくられる際の染色体の組換え(交差)により、白毛遺伝子が載った染色体とは別の染色体に載るかもしれない。
以上は仮説というより妄想に近いのかもしれませんが、シラユキヒメから継承されたかもしれない優れた遺伝子の効果を、白毛産駒ではもとより、
非白毛産駒でも見せつけてもらいたいというのが、私がハヤヤッコに種牡馬になってもらいたいと思う大きな理由です。
シラユキヒメ牝系で鹿毛のメイケイエールやママコチャは、牝馬であることから、
シラユキヒメから継承したミトコンドリアDNAを仔に授けることができるという面からの期待は当然にありますが、
シラユキヒメの子孫で非白毛ということでは上記の視点での応援の気持ちが加わります。
「ハヤヤッコの仔が見たい」との声を耳にすると嬉しくなります。ただ、上記のとおり、それがもし白毛産駒を見たいという気持ちのみならば不十分に思うわけです。
過日見たSNSのコメントで、その産駒が白毛で生まれればまだしも、
これが鹿毛や栗毛といった普通の毛色に出たときに積極的に買いたいという人がいるのかどうか、というのがありました。まさしくそこです。
確かに (その2)では、依然としてシラユキヒメの白毛の血を引いた子孫からは競走能力が高いものが沢山出るかもしれず、
私が生産者だったら、 この一族の白毛牝馬を積極的に導入したくなるかもしれないとは書きました。
その一方で、芝・ダート不問のしぶとい足、高齢でも活躍する「無事之名馬」としての能力を、白毛ゆえにかえって見逃してしまわないかということです。
いずれにしても、無事に競走生活を全うして種牡馬への道が開けるのか。まずはそこですね。
(2024年11月17日記)
戻る