拙著『サラブレッドの血筋』に託す想い
拙著 『サラブレッドの血筋』 の既版(第2版)を発行したのが3年前の9月で、以後、
新たな科学的論説を盛り込みながらだいたい1年半から2年ごとに発行を継続していく予定でおりました。
第2版では2013年1月から2017年6月までの4年半の間に行われたGIレースの勝馬を全て網羅した母系樹形図を掲載したのですが、
こちら でも書いたとおり、次の第3版では一気に今世紀(2001年以降)生まれの全GI馬を網羅することとしました。
ということで、かなりのボリュームとなり、この樹形図だけでも500ページ以上となる予定です。
なお、このようにページ数がかなり増えてきたことと、前回 も書いたとおり父系には科学的意義を見出せませんので、
次版以降は父系樹形図は掲載しません。
拙著は私の科学的論述のページと樹形図のページで構成しており、今後も同様のスタイルでいきます。
この論述ですが、第3版では現在のところ以下の4つの項目を予定しています(若干の変更の可能性もあり):
1.母系の重要性
2.近親交配の意味
3.血統理論の在り方
4.科学的啓発の必要性
既版をお持ちの方はお分かりと存じますが、私の論述は英文も併記しています。第2版のこの論述の和文は40ページ、これを翻訳した英文は42ページほど入れています。
拙著を手に取って下さる国内の大半の方々は、この英文のページは全くの無駄に思われるかもしれません。
このページがなければもう少しコンパクトになり、コストも下がるのではないかと思われるかもしれませんね。
しかし、和英併記は私の究極のポリシーなのです。拙著は全世界の競馬界(特に生産界)に向けて書いているのです。
「なに偉そうなことを言ってるんだ」 と思われたかもしれませんが、第2版はアイルランドの生産者(だと思う)からも注文を戴き、本当に本当に有難く思った次第です。
本ウェブサイトのトップページの冒頭部分には我が海外向け英語サイトのリンクを貼っていますので、よかったら見て下さい。
日本語版と英語版を別々に発行したらどうかとも思われるかもしれませんが、別刷りはコストが到底見合いません。
よって、このような和英併記の形態としていることをご理解頂ければ幸いです。
第2版の論述の最後に、私の想いを以下のとおり記しました:
「いまの私の日本の競馬界に対する心情は以下の3つに集約されます。
@日本の競馬文化の維持および発展のためには、中小牧場を衰退させるわけにはいかないという想い。
A生物学系を専攻した者として、「遺伝」 という生命現象が誤解され歪曲されていることに対するもどかしさ。
B日本の情報を海外へ発信することのさらなる必要性を痛感。」
上記のBがまさしく和英併記にこだわる私の気持ちの源流であり、人馬ともに国を越えての往来がますます活発化する一方で、まだまだ日本国内の国際化への対応、
特に こちら や こちら にも書いたように、
情報の発信や共有についての意識が本当に足りないと思っているわけです。
「1.母系の重要性」 の和文原稿がほぼ完成しました。「2.近親交配の意味」 の原稿には、
2016年から18年の3年間に開催された世界のGIレースに勝った馬の近交度合いを調査し、生産国別等に有意差があるかの統計解析結果を掲載すべく、
現在そのデータを取りまとめているところです。
そんなこんなで、なんとか6月末くらいには和文原稿の全ては完成させたいですが、そしてまたその後に今度は英語の原稿を作成しますので、
レイアウトを調整したうえでの最終稿の完成はやはり9月か10月でしょうか。
当然のことながら、これら全て私ひとりでやっています。というわけで、早くても発行はまたまた遅れて11月かな……。
(2020年5月23日記)
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