我が母系樹形図(その2)

昨日の宝塚記念、あらためてクロノジェネシスの強さに痺れましたね!  自分で書いたコラムでこの馬に言及したものは こちら がありますが、そこにも書いたとおり、 1頭の牝馬が生涯に出産できるのはせいぜい10数回であるがゆえに複数のGI馬を産むだけでも計り知れないことなのに、 違う種牡馬を相手にもそれを成し遂げてしまう牝馬に内在するパワーとはいったい何なのか?……といつも思ってしまうのです。

こちら(図1)がクロノジェネシスの母系樹形図であり、太字は違う種牡馬を相手に複数のGI馬を産んだ牝馬です。 当然ながら母クロノロジストは太字ですが、この樹形図中には他にも太字の牝馬がいます。 樹形図中のクロノジェネシスのちょっと下を見ると Royal Delta という馬も太字で、この馬が産んだ3頭のGI馬はなんと全て父親が違い、 Royal Delta は父エンパイアメーカー、Crown Queen は父 Smart Strike、Delta Prince は父 Street Cry です。

GI馬を2頭産むだけでも凄い、3頭産むなんて異次元のことのように思えるのですが、さらに、4頭も産んでしまった馬もいるのです。 ひと昔前なら Galileo の母 Urban Sea がその代表例ですが、 今世紀(2001年以降)生まれのGI馬を加筆対象としている我が母系樹形図においては、4頭のGI馬を産んだ牝馬の例は2つありました。 そして新たに3例目として、先週のディアヌ賞(仏オークス)を勝った Joan of Arc は、母 You'resothrilling が産んだ4頭目のGI馬になります。 こちら(図2)がその樹形図であり、まさしく偉大なる母です。一方で、これら4頭の父は全て Galileo であり、 一昨年に こちら で書いたように、これら優秀産駒はもっぱら Galileo のお蔭と言われてしまうのではないかと、 常にそんな懸念を抱いています。

話を宝塚記念に戻せば、こちら にも書いたように、 個人的には明治時代に小岩井農場が輸入したフロリースカップを母系の祖とするレイパパレを応援していましたが、初めて土がつき3着に敗れました。 こちら(図3)がその樹形図ですが、 この牝系からはメイショウサムソン、ウオッカというダービー馬が2年連続で出ていることに奥深さを感じざるを得ませんし、 我が樹形図は今世紀生まれのGI馬を加筆対象としているため掲載はしていませんが、スペシャルウィークもこのフロリースカップ系です。

各ファミリーの樹形図を包括的に見渡してみると、このようなカタカナ名が列をなしている枝葉は本当に少なくなっていることを痛感するのですが、 レイパパレのような馬が確実に出現することにより、その牝系の根底に流れる「何か」を感じざるを得ないのです。 ふと、フロリースカップ系の話は、7年前(2014年)に『サラブレ』編集部が発行の『サラBLOOD!』(vol.3)に寄稿した 「ミトコンドリアとファミリーライン 〜生物学的観点から見る母系の重要性〜」で言及したことも思い出しました。

そして、図3 を再度眺めてみて頂きたいのですが、その左上部分、 太字のトキオリアリティーの子孫であるインディチャンプとリアルインパクトという安田記念馬同士が上下に並んでいることにも「何か」を感じてしまいませんか?  このようなひとつひとつからも、拙著『サラブレッドの血筋』の第3版のサブタイトルを「偉大なる母の力」とした理由がご理解頂けると思います。

(2021年6月28日記)

我が母系樹形図(その3)」に続く

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