我が母系樹形図(その3)

「我が母系樹形図」と題したものは (その1)(その2) と書きましたが、今回は久しぶりの続編です。

日本軽種馬協会の月刊機関誌 『JBBA NEWS』には直近の輸出入馬のリストが掲載されています。 毎回私は、そのリスト中の輸入繁殖牝馬にどれだけGT馬がいるか等のチェックをしており、カタカナ名が登録されたら我が母系樹形図に加筆しているのですが、 最近輸入された繁殖牝馬で、ちょっと気になる馬の樹形図をいくつかピックアップしてみたいと思います。

私の樹形図では今世紀生まれのGI馬に下線を付し、違う種牡馬を相手に複数のGI馬を産んだ牝馬は太字にしていますが、 まずはアルゼンチンのGIヒルベルトレレナ大賞を勝った アメリカンソング。 半兄と半弟もGI馬で、この2頭の父は Not for Sale ですが、アメリカンソングの父は Stripes Song であることから、 その母 American Whisper は太字にしています。 別途何度も申してきたことですが、繁殖牝馬が生涯に産める数はせいぜい10数頭なのに、複数のGI馬を産むこと自体が普通の話ではありません。 それも違う種牡馬相手にということは尋常ではなく、そこには競走能力にプラスに働く「母性遺伝する何か」があると考えるのが自然でしょう。 ちなみにアメリカンソングは American Pharoah の仔を受胎して輸入されたようです。

母が太字ということでは、豪GIフライトSを勝った ファンスター。 この馬の父は Adelaide ですが、半姉で父 High Chaparral の豪GIクイーンズランドオークス馬ヤングスターはすでに輸入されており、 姉妹でどのような仔を出すかが楽しみですね。

近親にGI馬が密集ということでは、米GIフリゼットS勝馬の デイアウトオブジオフィス。 この牝系の樹形図は (その1) でも引用しましたが、ご覧のとおり下線を付した馬が重なっています。 また、ちょっと遠いので血縁度は薄いですが、樹形図の右側には凱旋門賞を連覇した Treve や日本のGI馬の名前もいくつか見え、 新たに日本で種牡馬入りしたヴァンゴッホもいますので、眺めてるだけでも楽しいです。

上記アメリカンソングを含めてアルゼンチンからの輸入は継続的に活発ですが、ジョイエピフォラとシタディリオ の2頭は同系で、 前者はエストレジャス大賞ジュヴェナイルFを含め亜GI2勝、後者は亜GIエストレジャス大賞ディスタフの勝馬です。 ご覧のとおり、シタディリオの下の部分も下線を付したGI馬が重なっており、見事ですね。 なお、この2頭の5代母であるこれらGI馬群の牝祖の名は Hanako であり、オーナーは親日家だったのでしょうか。 また、その母(この2頭の6代母)であるオリンピカは日本でも繁殖生活を送ったようですが、残念ながら日本ではその末裔は残らなかったようです。

薬物検出でケンタッキーダービー優勝が幻となってしまった今は天国にいる Medina Spirit……。 その母が輸入されたのにはちょっと驚きましたが、Medina Spirit はオーサムアゲインSを勝っているのでGI馬であることに変わりはなく、 我が樹形図にはその名は残り、よってその母にも モンゴリアンチャンガ とカタカナを加筆しておきました。

ところで、私は世界のGIレースの結果を入手次第、その勝馬を我が樹形図に随時加筆しているのですが、一昨日の米GIビホルダーマイルSを勝った As Time Goes By の母系には思わず唸りました。ご覧のとおり下線を付した馬が5つも連なっています。 Take Charge Lady は、2頭のGI馬の母である Charming、そして As Time Goes By を含めた3頭のGI馬を産みました。 これら4頭の父は Seeking the Gold、A. P. Indy、Unbridled's Song、American Pharoah と見事なまでに違います。 さらに、Charming の仔の2頭のGI馬の父も Giant's Causeway、War Front とそれぞれ違い、このような例にあらためて遭遇すると、 「母系」に書いたことの念押しとなりますが、 世界の生産界はミトコンドリアの遺伝子のような母性遺伝をする因子にもっともっと注目すべきです。

ちなみに、『JBBA NEWS』に書かれている上記のファンスター、シタディリオ、モンゴリアンチャンガの飼養予定地は「安平町」とのことですからノーザンファーム、 また、デイアウトオブジオフィスとジョイエピフォラの飼養予定地は「千歳市」とのことですから社台ファームでしょう。 これはまさしく「巨大な自転車操業」に書いたとおりであり、 つまり社台グループは、少なくとも母性遺伝の重要性については、その科学的機序まではどうだか分かりませんがとっくの昔から気づいてはいるのです。

(2022年3月7日記)

我が母系樹形図(その4)」に続く

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