遺伝学的にも興味深いシラユキヒメの白い一族(その5)
「遺伝学的にも興味深いシラユキヒメの白い一族」と題したものは、
(その1)、(その2)、(その3)、(その4)
と計4回書きましたが、今回は1年ぶりにその続編です。
先週末は、土曜そして日曜と連日府中に足を運びました。
土曜の京王杯SCにはこの母系のじゃじゃ馬たるメイケイエールが、そして日曜のヴィクトリアマイルにはまさしく注目のソダシが登場するからです。
ちょうど去年のいまごろは、スポーツ報知のオークス特集で こちら のとおり取り上げてもらったのですが
(ネット版は こちら)、考えてみれば私は、
この母系の遺伝学的側面からの考察に関して市販誌へ寄稿したり、拙著『サラブレッドの血筋(第3版)』で深く言及してきたにもかかわらず、
その張本人……じゃなくて張本馬たるメイケイエールにもソダシにも直接逢ったことがないことにいまさらながら気づき、
入場券入手が緩和されたことにも乗じて(日曜分のゲットはぎりぎりでしたが)、連日現場に赴きました。
京王杯SCはメイケイエールが先頭でゴールに飛び込むと、まるでGIかのごとく場内からは拍手が沸き上がったのにはちょっと感動したのですが、
みんなこの馬を、以前大失敗をやらかした我が子の発表会を眺める保護者のごとく、ハラハラしながら応援していたことの裏返しでもありますね(笑)。
そしてヴィクトリアマイルの方はソダシが素晴らしい走りを見せ、場内の盛り上がりは最高潮でした!
それにしても、メイケイエールは大外枠12番だったのに、ゲートへの最終誘導は隣りの奇数番の馬にされたり、
ソダシにしても、今回もゲートには真っ先に誘導され閉じ込められたわけで、笑ってしまうくらいに互いが似たり寄ったりであり、非常に興味深いです。
このような気性の類似性も、シラユキヒメから母性遺伝してきた因子が関与しているのでしょうか??
ところで、ご存じ私は今世紀生まれの世界のGI馬を網羅した母系樹形図を作成していますが、2-w 族の該当馬は現時点でソダシのみです。
こちら の我が英文ウェブサイトを下の方にスクロールして頂きたいのですが、
ご覧のとおり、グローバルな情報発信の意味を込めて、今年以降のGI競走を勝った馬の母系樹形図のリンクを張ることにしました。
これら各GI勝馬の樹形図を見比べてみると、ソダシの 2-w 族の樹形図が断トツにシンプルで、こちら のとおり、孤高の一本杉です。
あくまで今世紀生まれのGI馬という視点でしたら、この牝系はこのように非常にシンプルな一本杉となります。
確かにこの牝系の中でも目立った馬がソダシだけならば、そのクロフネの精子に載った遺伝子群とブチコの卵子に載った遺伝子群の相性が偶然にも抜群によかった、
その結果がソダシにすぎないということになるかもしれません。
しかし、並行してメイケイエールのような馬がいるとなると、そしてその馬は白毛ではなく鹿毛だとなると、やはりこの 2-w 族の中でもシラユキヒメにおいて、
毛色に関する変異のみならず競走能力に関与する別の変異も入ったのではないか? と思わずにはいられなくなるのです。
その変異が常染色体上のものなら (その2) に書いたような仮説、
またはミトコンドリアのDNA上のものなら (その4) に書いたような仮説もありうるというわけです。
拙著第3版の「第4章 未知なる遺伝子の可能性」は こちら が冒頭、こちら が締めの部分で、
メイケイエールやソダシの遺伝子構成を推察しながらシラユキヒメの牝系の話に4ページほど費やしたのですが、実は、そこまでページを割くべきだったかな?
とも思っていたのです。しかし先週末、メイケイエールとソダシの勝利をまさしくこの目の前で見て、それは間違っていなかったな……と自分なりに納得したのです。
そして、この 2-w 族の一本杉 に、メイケイエールの枝葉を加筆することを願ってやみません。
(2022年5月17日記)
「遺伝学的にも興味深いシラユキヒメの白い一族(その6)」に続く
戻る