ノーザンファームが保有する日本古来の牝系

昨日のマイルチャンピオンシップは、出走馬中唯一の牝馬たるナミュールが直線一気の差し切りで快勝しました。 騎乗予定だったライアン・ムーアが午前中の落馬負傷で急きょ藤岡康太に乗り替わり、そのせいもあってか単勝オッズもかなり上昇したようで、 藤岡にそのオッズ変化の情報が伝わったのかはわかりませんが、彼の気持ちを想像してみると、 あたかも乗り替わりのせいで負けたと言われたくないがゆえの意地を見せると思って、普段馬券をほとんど買わない私が単勝を100円だけ買ったのです。 それが1730円となって返ってきたのは久々の感動でした。

私が今世紀生まれの世界のGI馬を網羅した母系樹形図を作成しているのはご存じのとおりですが、というわけで、 早速ナミュールを こちら のとおり加筆しました(下線は今世紀生まれのGI馬)。これを見て、ふと思ったのです。 海外の名牝を積極的に輸入し続けているノーザンファームですが、別途彼らが意図的に保有する日本古来の牝系には「何か」があるのだろうか?……と。

依然としてノーザンファームの海外名牝の導入に関する貪欲さに翳りなどまったく見られません。 こちら の記事によれば、 先々週には、GIエイコーンステークスの勝馬 Search Results および BCジュヴェナイルフィリーズを含むGI2勝で昨年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬たる Wonder Wheel を落札したようです。 これは「巨大な自転車操業」(その1) (その2) に書いたことをそのまま裏づけるかのようです。

その一方で、上記のナミュールの樹形図はご覧のとおりであり、その母系にはカタカナ名が延々と続きます。1世紀近く日本で育まれた系統なのです。 そのナミュールの叔母には BCディスタフを勝ったマルシュロレーヌがいることからも、海外名牝に貪欲なノーザンファームながら、 その慧眼(けいがん)の視野は思った以上に広いのだろうかという想いが湧くのです。 確かにこの牝系は桜花賞馬たるキョウエイマーチの存在は大きいのですが、それを差し引いても、 この日本古来の系統には有意義な母性遺伝をする遺伝子があると目をつけたのだろうか?……などという深読みをついついしてしまうのです。

以上のことは、明治時代に小岩井農場が輸入したフロリースカップを母系の祖とするレイパパレが快進撃を続けていた時にふと想ったことでもあり、 「隠し味のような血の意義」や「明治時代から続く小岩井の牝系」に関連のことを書きました。

昨日SNSにこのナミュールの母系樹形図を添付して、海外の名牝をアグレッシブに輸入しているノーザンファームが意図的に保有する日本古来の牝系には何かがあるのかと思ってしまう、 ということを書いたら、かなりの反響がありました。 そこに頂戴したコメントに、ジオグリフの母系(こちら)や、 そこまで古来ではないもののイクイノックスの母系(こちら)はノーザンファームの中では地味な牝系なので、 よく残していたなと感じた、というものがありました。言われてみるとまさしくであり、彼らの求める要件を充たす「何か」があるのでしょう。

今週末は大注目のジャパンカップです。 イクイノックスとリバティアイランドが人気を二分しそうですが、前者は上記のとおりの母系である一方、後者の母は豪州産でGIを2勝した馬です。 そのような視点から観戦するのもまた一興だと思います。

(2023年11月20日記)

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