巨大な自転車操業(その4)

巨大な自転車操業(その3)」では一昨年の10-12月に輸入の繁殖牝馬126頭を調査しましたが、同様に昨年10-12月に輸入の繁殖牝馬を調べてみました。 計112頭であり、このうちGI馬は19頭、GI馬を既に産んでいる馬は2頭であり、これら21頭の飼養予定地の内訳は以下でした。

 安平町:9頭
 千歳市:4頭
 その他:8頭

「その他」の割合が高くなっており、将来はどのように推移していくのかは要注目でしょう。 今回は、今世紀生まれのGI馬を網羅している我が母系樹形図上で、これら21頭を眺めてみたいと思います。

ではGI馬の19頭からです。登録カタカナ名が未確認のものは原名で、また飼養予定地が安平町のものは(安)、千歳市のものは(千)と記します。 リンクを張った樹形図中に下線を付したのが今世紀生まれのGI馬で、太字は違う種牡馬相手に複数のGI馬を産んだ牝馬です。

レズー
 2022年の英チヴァリーパークSの勝馬です。

ソーテルヌ
 2023年の仏ムーランドロンシャン賞の勝馬で、近親を見ると唸りますよね。ドイツでは頭文字を母馬と同じにするルールがあり、 この馬の母系は「Sライン」とも呼ばれている名牝系であり、日本で血統登録された馬の頭文字も「S」にしていることに気概を感じます。 この馬の仔の名もSから始まることを願ってしまいます。

アンドテルミーノーライス
 2022年の米デルマーデビュタントSの勝馬です。

Resultante (千)
 2024年のブラジルのガヴェアディアナ大賞の勝馬で、アグネスゴールド産駒です。 (その3) にも書いたことですが、サンデーサイレンスの孫を輸入ということには、いろいろと言いたくなります。

Daddysruby (千)
 2023年の米ラブレアSの勝馬です。

Marketsegmentation (千)
 2023年の米ニューヨークSの勝馬です。

ディファイニングパーパス (安)
 2023年の米アシュランドSの勝馬です。

ベレッツァデアルテアガ (安)
 2023年にヒルベルト・レレーナ大賞を含む亜GIを3勝した馬です。

ワンダーウィール (安)
 2022年にBCジュヴェナイルフィリーズを含む米GIを2勝した馬です。

クイーンゴッデス (安)
 2021年の米アメリカンオークスの勝馬です。

Scotish Star
 2020年の亜ポージャ・デ・ポトランカス大賞の勝馬です。

Ocean Road(安)
 2022年の米ゲイムリーSの勝馬です。

サージキャパシティー
 2023年の米メイトリアークSの勝馬です。

Fun to Dream
 2022年の米ラブレアSの勝馬です。

Vita da Mamma (安)
 2021年にミル・ギネアス賞を含むチリGIを3勝した馬で、シーキングザダイヤの産駒です。

North Ridge (千)
 2023年のチリのラス・オークスの勝馬です。

アデアマナー (安)
 2023年と24年のクレメントLハーシュSの連覇を含む米GIを3勝した馬です。

No Fear (安)
 2023年の亜ポトランカス大賞の勝馬で、上記の Resultante と同じくアグネスゴールド産駒です。 つまり、安平町と千歳市で1頭ずつブラジル産のアグネスゴールド産駒を輸入ということです。

Hit Emerit
 2021年の亜セレクシオン・デ・ポトランカス大賞の勝馬です。ご覧のとおり、アルゼンチンで多くのGI馬を出す牝系です。

そして、以下の2頭はGI馬ではありませんが、GI馬の母となっている馬です。

ローレリタ
 2023年に米ビヴァリーディSおよび加イーピーテイラーSを勝った Fev Rover を産んでいます。

ホットンヘクティック (安)
 ヘニーヒューズ産駒です。2023年のサマーSを含む米GIを2勝した Carson's Run を産んでいます。

あくまで上記は10-12月に輸入された馬を眺めた場合であり、当然にそれ以外の期間にも繁殖牝馬は輸入されています。 その一方で、輸出される繁殖牝馬の数は本当に微々たるものです。 それこそ (その2) に書いた「種付後の出戻り馬」らしきものを除いたら、いるかいないかというレベルです。

確かに「バイアスのかかった遺伝子プール(その12)」にも書いたとおり、 繁殖牝馬の積極的な輸入は、サンデーサイレンスの血であふれている日本の生産界における偏ったインブリーディングを避ける意味も持ちます。 しかし、輸入数と輸出数のあまりにアンバランスな現状を見ると、玉突き的に内国産の繁殖牝馬は少なからず淘汰されていることも想像できるのです。 つまりこれは、内国産繁殖牝馬が不当な過小評価を受けてはいないだろうかという懸念さえも惹起します。

日本時間の昨日深夜に行われた世界最高賞金のサウジカップを、日本馬のフォーエバーヤングが快勝して沸き上がる日本の競馬サークルながら、 「一流が味わう寂しさ」に書いたことをあらためて思ってしまうわけです。

(2025年2月24日記)

過去の日本軽種馬協会の月刊機関誌『JBBA NEWS』に掲載の輸出入馬リストも全て洗い出したところ、昨年1年間に輸入された繁殖牝馬の総数は124でした。 上記に加えてさらに3頭のGI馬がいましたが、飼養予定地は全て安平町であり、これら24頭の内訳は以下となります。

 安平町:12頭
 千歳市:4頭
 その他:8頭

この3頭の樹形図も以下にリンクを張ります。

カシェイ (安)
 2022年の英1000ギニーの勝馬です。

プロスペラスヴォヤージ (安)
 2022年の英ファルマスSの勝馬です。アーモンドアイもいる Best in Show の母系はリンクのとおりの繁栄で、 全末裔を表示するとこのようにかなりの縮小となるので、プロスペラスヴォヤージの周辺だけを こちら にピックアップします。

ルースレスデイム (安)
 2023年の豪ロバートサングスターSの勝馬です。

(2024年2月25日追記)


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