叩き上げ社長が陥る落とし穴
以前書いた「日高の生産者の講演内容に思ったこと」で触れた生産者は、馬体観察においては卓越した相馬眼を持つことで非常に有名です。
そんな眼が全くない私など、ネットやテレビでのこの生産者の馬体を語るコメントには毎度のことながら唸りますし、本当にお世辞抜きで素晴らしいと思います。
ただ、その意味で私は、この生産者については腕一本で生きてきた叩き上げの中小企業の社長のイメージをどうも持ってしまうのです。
その事業サイズはもはや「中小」ではないのですが。
この生産者は、その発言内容に惹かれる方も多いようで、かなりのカリスマ性があり、競馬サークル内の信者数も相当のようです。
しかし気をつけなければならないのは、このように神格化された人の発する言葉というものはついつい全てが正しいと思ってしまいがちなことです。
(こちらも参照)
世間の中小企業の敏腕社長は、何事に対しても自分が率先して対処してきたので(そうせざるを得なかったので)、他人任せにしない(できない)部分も多いものと推察します。
残念ながら、それゆえに、専門家とのタイアップなどの必要に応じた分業の実践に迅速に対応できず、事業が先細りとなった例も少なくなかったと想像します。
「何が社台グループを成長させたのか?」
および「ディープインパクトのブランドに依拠する社台グループの課題」でも書いたとおり、
社台グループの成功は、その裏に専門家とのタイアップを含めた確かな分業による部分が大きかったのではないでしょうか?
現在私はファミリーラインの樹形図を勢力的に整備しておりますが、父系のデータ量とは全く比較にもならない膨大な母系データを収集してまとめ上げることは、
インターネットがない時代では到底不可能なことでした。
情報化社会と化した現代において、例えば血統にも触れた競馬予想のコメントを見ても、母系に関する言及が増えてきたような気がします。
このようなことからも、通り一遍のファンに対してさえも「まやかし」は通じなくなりつつありますし、
生産者にしても評論家にしても、インターネットがなかった時代と同じように依然種牡馬ばかりに偏った思考では生き残れるはずがありません。
柔軟性のない思考を持ち続ける者は間違いなく淘汰されていくでしょう。
シーザリオを例にしても(こちらを参照)、母系に対するさらなる注力は必須です。
私は「日高の生産者の講演内容に思ったこと」で、
この生産者が日高活性化のキーワードとして「種牡馬」を前面に出していることが懸念である旨を書きましたが、
この講演は5年以上も前のものですので、よっぽどかたくなでなければ、そのような思考に今も依拠しているはずはないとは思っています。
確固たる慧眼を持つ上述の生産者にこそ、日本の競馬界のさらなる発展のためにも是非とも頑張ってほしい。
つまり、このカリスマ生産者の強力なサポーターこそ私なのです!
こんな辛口でしかこの生産者を応援できない自分の不器用さに呆れながらも、「日高の活性化」という目標は全く同じなのですから、今後も応援を続けて参ります。
(2019年2月11日記)
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