最新の高校の教科書はすごい!

今春、我が二卵性双生児の息子たちが高校に入学します。 どちらも地元の県立ではありますが別々の高校で、数日前、それぞれが高校の事前説明会に行き、新しい教科書をもらってきたようで、 各自の机の上に(今だけでしょうが)整然と並んでいます。

ふと、これらの背表紙のいくつかに 「生物」 という文字を見つけ、勝手にパラパラと見ていたら、なんと生物学の最先端の話が掲載されているではないですか!  思わず血が騒ぎ始めました。

あらためて、長男のA高校の生物のメインの教科書は『改訂 生物基礎』(第一学習社) でサブが 『サイエンスビュー 生物総合資料』(実教出版)、 次男のB高校(←私の母校)はサブだけ違い 『スクエア 最新図説生物』(第一学習社)。

まず、メインの『改訂 生物基礎』 ですが、その第1編がいきなり 「生物と遺伝子」 であることに驚かされます。これも時代の流れでしょうか?  さらに、私は母系の重要性を説くキーワードのひとつに 「ミトコンドリア」 を掲げていますが、 この教科書には こちら でも言及した 「細胞内共生説」 のことも書かれており、感嘆してしまいました。

私は母系の重要性のもうひとつのキーワードに 「エピジェネティクス」 も掲げていますが、 サブ教本の 『サイエンスビュー 生物総合資料』(以下@) と 『スクエア 最新図説生物』(以下A)をそれぞれめくっていくと、 まさか、エピジェネティクスの話が詳述されているではないですか! エピジェネティクスは遺伝学の領域でも最先端であり、 これが高校の教科書にこれだけのスペースを割いて詳述されていることには心底ビックリしました。

@においては、私が こちら で論述した三毛猫の毛色発現のエピジェネティックなメカニズムについても書かれており (画像)、これは拙著 『サラブレッドの血筋』 や こちら でも詳述した 「X染色体不活性化」 という現象によるものなのですが、これについてAではさらに詳しく説明されていることに(画像)、あらためて感動しております……。

拙著に書いた私の科学的論評や、血統についての科学的な側面からの質問を受けたときの私の回答に対して、「難しい……」 との拒絶反応を匂わすコメントを頂戴してしまうことも残念ながらあります。 しかし、私はしょせん 「B級科学者」 であり、その知識は こちらこちら に書いた程度です(苦笑)。 つまり、私が偉そうに発信している生物学(遺伝学)の話は、或る意味で、上述の教科書に書かれている内容にすぎないのです。

食べず嫌いではないですが、「遺伝」 のメカニズムはハナから難しいという先入観を抱き、科学の基本から完全に逸脱している血統理論と同調してしまってはいませんか?

私は、拙著にも書きましたが、既存の生物学や統計学以上の血統理論はないと思っています。 そして今回、息子たちの教科書を見て、この内容を確実に理解すれば配合に関する科学的側面の知識の大半は得たことになるのではないか? とも思ったのです。

反対側の観点から言えば、ディープで特殊なサラブレッドの血統理論を展開する生物学者はいないような気がするのですが、これは、 既存の教科書に書かれている事項以外に新たに論じる部分はほとんどないということの間接的な証左なのかもしれません。

どこかの国の首相が基本的な漢字を誤読する姿には唖然とすると同時に、 理科も国語も社会も数学も、われわれとして教科書レベルを確実に習得しておくことの大切さを再認識してしまいます。

ところで、我が息子たちに 「生物学に興味ある?」 と尋ねると、そろいもそろって2人とも 「全然ない」 との即答には、ちょっとガックリきました(苦笑×2人分……)。

(2020年3月21日記)

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