なぜA型とA型の両親からO型が生まれるのか?

人の血液型ですが、なぜA型とA型の両親からO型が生まれるのでしょうか? なぜB型とB型の両親からO型が生まれるのでしょうか?  なぜA型とB型の両親からO型が生まれるのでしょうか? 子供にこのような質問を受けたとして、的確に答えられますか?

馬で言えば、なぜ芦毛と芦毛の両親でも鹿毛や栗毛が生まれるのでしょうか? なぜ鹿毛と鹿毛の両親でも栗毛が生まれるのでしょうか?

これらを説明できなければ、「配合」 は語れないと私は思っています。 このような基本中の基本を理解していなければ、配合論を展開する血統論者も、配合を模索する生産者も、致命的なことなのではないかとさえ思っているのです。

3年前、髪が生まれつき赤い(茶色い)アメリカ人のクォーターの女子高校生が中学時代に黒染めを強要されたという記事があり (こちら)、 彼女は中学時代には担任の教師に 「ハーフが黒髪に近いのになぜ、クォーターのあなたの髪がこんなに赤いのか?」 とも言われたとのことで、 当時私はツイッターで 「この学校には遺伝の原理を説明する理科(生物)の教師がいなかったのでしょうね」 と皮肉を書きました。 この黒染めを強要した学校や教師の言い種は、「おまえは両親ともA型なのになぜO型なんだ。A型に血液を入れ替えろ!」 というのと全く同じです。

人のO型の遺伝子は、「遺伝子の「優性」と「劣性」」で詳述した劣性(潜性)遺伝子であり、上述の高校生の赤(茶)毛を導く遺伝子も同様です。 また、馬の鹿毛や栗毛の遺伝子は芦毛の遺伝子に対して劣性(潜性)であり、栗毛の遺伝子は鹿毛の遺伝子に対して劣性(潜性)です。

生産者が自己の繁殖牝馬に対する交配種牡馬の検討の際に、インブリーディングの効果(メリットもデメリットも含む)を色々と考えて選択を悩むのは常でしょうが、 その 「効果」 とは、その種牡馬および繁殖牝馬の祖先が保有していた劣性(潜性)遺伝子がもたらす 「隠れていた資質」 が表面化するということであり、 つまりそれは 「隔世遺伝」 を意味します(こちら も参照)。

これらの遺伝の基礎は、「最新の高校の教科書はすごい!」 でも書いたように高校1年生の教科書には詳述されているのですが、 何千万円、何億円という馬を売買する当事者が全くそれを理解していないという魔訶不思議な現象が科学全盛の現在においてもあちらこちらで起きているのが競馬界です。

……と、ここまで皮肉たっぷりなことを書いてしまいましたが、私も他人のことは全くもって言えません。 私は普段の仕事では英語の書類をかなり扱っている関係から、そこそこ読み書きはできるつもりでいたのですが、ふと、中学時代の英語の教科書をパラパラと見て思うことは、 忘れている語句や文法がなんと多いことか!  こちら にあるような 「大人のおさらい本」 をしばしば書店で見かけますが、 本当に、あの頃学んだことが如何に大切だったか、そしてそれらを如何に忘れているか……ということに愕然とするのです。

ところで、日本ウマ科学会 は毎年末に年次学術集会を行います。 今年はコロナの影響でウェブ開催とのことですが、果たしてどんな演題がラインナップされるのでしょうか?

いつも思ってしまうのは、研究者の自己満足的な高度で難解な内容ばかりになってはいないか?……ということです。 「利害関係のない立場の強み」 にも書いたとおり、この学会の設立趣旨は、 「獣医学や畜産学に限らず、ウマに関する人文科学や芸術なども取り込んで、幅広い分野の会員を募り、相互に情報を発信するとともに、 研究者と実務者が一堂に会して意見を交換し、現場のニーズに対応した学術や技術の向上と普及を促進する」 とのことです。

従って、この趣旨に照らせば、一度このような学術集会で中学や高校の理科(生物)の教科書をあらためてみんなで読み合わせてみる、 なんていうのは非常に有意義なのではないだろうかと、「「ゲノム」の意味が分からない!」 にも書いたようなB級科学者の私は思ってしまうわけです。

これは冗談でも何でもありません。現在の競馬サークルを眺めてみると、心底そのように思うのです。思わずにはいられないのです。学会の重鎮の皆さま、如何ですか?

(2020年10月17日記)

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