拙著の海外からの受注に際し思ったこと

先々週、アメリカのケンタッキーにある Performance Genetics というサラブレッドを遺伝子面から探究している会社の方から拙著を1冊注文頂き、発送しました。 すると、こちら のとおりツイッターで紹介頂いたせいなのか、 海外から拙著に対する問合せや注文が多数来たのには驚き喜んだと同時に、対応にてんやわんや……!

あらためて、今年3月に拙著『サラブレッドの血筋』の第3版を完成させましたが、注文を頂戴して今までに発送した先の国は、 UAE、豪、米、英、トルコ、スペインとなりました。加えて現在、アイルランド、ペルーからも照会を受けており、 さらにはUAEの大富豪(?)からは「5冊欲しいが可能か?」と言われたものの、先方はしばらく旅行に出るらしく、 とりあえず正式発注はその後にということになったのですが、果たして???

今般、注文を受けるメール等でのやり取りにおいて、深い情熱を抱いて血統の探究を行っていることや、 自らの所有する馬の血統を詳細に記してくるなど丁寧に自己紹介をしてくる人がいる一方で、送付先しか書いてこないぶっきらぼうな人がいたりと、 人間のキャラが多種多様なのは万国共通だなと妙に納得してしまったのですが、 ひとつ言えることは、こんな私ごときにコンタクトして下さることは、広い意味で「日本」というものに興味を持って下さっているということだと思うのです。 本当に有難いことです。

思い起こせば、丁度40年前の第1回ジャパンカップで、見栄えのしない牝馬であったメアジードーツに日本の一流馬が蹴散らされたあの衝撃以降、 「「内国産」というレッテル」にも書いたような感覚がわれわれ日本の競馬人のDNAに刷り込まれたかのごとくでしたが、 世界の名血を活発に導入しながら日本の生産界のレベルを総合的にアップさせ、同時に生産界自らの内国産に対する卑屈感からも解放したことは、 社台グループの本当に素晴らしき功績であったことは間違いありません。 40年前のジャパンカップを観た身としては、過日のブリーダーズカップや香港国際競走での日本馬の活躍には隔世の感を抱かずにはいられず、 今般拙著を注文下さった海外の方々の言葉の端々からもあらためて、日本はようやく世界にも認められたという肌感覚を味わうことができました。

その一方で、海外の競馬を日本馬が盛り上げていることからも、われわれ日本の競馬サークルが持つべき視線の先は、 もはや国内だけではないということです。 「そんなこと分かってるよ」と言われそうですが、「国際化はまだまだ道半ば(その1) (その2)」 にも書いたことや、 血統面の論述にしても、クロス [cross] は「(異種)交配」の意味であって近親交配の意味はなく、 海外の関係者に誤解を与えないためにも、近親交配の意ではインクロス [incross]、異系交配はアウトクロス [outcross] と言うべきは、 是正すべき一例として繰り返し述べてきました。

海外の競馬サークルは同志でありライバルです。しかし、同志でもライバルでも、 例えば「我が日本の講ずべき方策」でも書いたように、協調(ハーモナイゼイション)は必須だということです。

拙著に話を戻せば、「拙著『サラブレッドの血筋』に託す想い」にも書いたとおり、我がポリシーに基づき頑張って和英併記としておりますが、 しかしやはり2言語の併記はかなりしんどく、第4版ではどうするか?……と考えていたのです。 が、今般、それなりに海外から引き合いを受けたことからも、次も頑張るしかない……と、ふんどしを締めて掛かります。 とは言っても、やはり1冊に和英併記ではページ数はかさみ、読者の方々もどちらか一方で十分なはずです。 次版を和文版、英文版と分刷することも今後検討していきますが、それにはそこそこの受注を得られなければコスト的に成り立たないことからも、 引き続き海外へのプロモーションにも精を出していきます。

こちら は英語の我がウェブサイトです。 さすがに和文のサイトのようにコラムは連載できませんが、海外でのプレゼンス向上のためにも、将来はもう少しなんとかしたいとは思っております。

(2021年12月22日記)

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