名牝を母に持つ名種牡馬(その2)

今回は、2年前に書いた「名牝を母に持つ名種牡馬(その1)」の続編です。

先日、「一流が味わう寂しさ」に書いたドバイ在住の大富豪(と思う)オーナーより、 「Saxon Warrior を種牡馬としてどう思うか?」と質問を受けました。 ご存じこの馬はディープインパクト産駒で英二千ギニー馬ですが、私は率直に、 「ディープインパクトは種牡馬として過大評価されていると思う。交配相手として名牝が繰り返し繰り返し用意されてきたがゆえに、 優秀産駒がたくさん出るのは当然の帰結と考える」と回答し、ディープインパクト産駒のGI勝馬の近親にはいかにGI馬が多数いるかについて、 すでに送ってある拙著『サラブレッドの血筋(第3版)』に掲載した表のとおりであることを説明しました。 ちなみに、この表をアップデートしたのが「天下無敵のブランド(その2)」の中の表(※1)です。

ただし、そのオーナーには、「Saxon Warrior の種牡馬としての成功はとても期待が持てるような気がする。 なぜなら、この馬の母のメイビーはGI馬、つまり母親が優秀であるからである」とも回答したのですが、そんな回答をした後に、ふと思ったのです。 私のディープインパクトの種牡馬としての評価は「それでもディープインパクトなのですか(その2)」 およびそこにリンクを張った先に書いたとおりですが、他方、種牡馬になったディープ産駒の期待値はどうなのだろうか?……と。

再度、上記の表(※1)をご覧頂きたいのですが、あくまでこの表に掲載しているのはディープ産駒の中でもGIを勝った馬だけです。 よって、種牡馬として大きな期待が寄せられているシルバーステートなどはGIを勝っていないので、残念ながらこの表には未掲載なわけですが、 この馬にしても半兄のドイツ産 Seville はGI馬であることから、仮に表(※1)に掲載した場合は立派に〇が付されるわけです。

つまり、ディープ産駒で種牡馬になれるようなレベルの馬は相対的に母系が優秀であること、よって、 もしも「名牝を母に持つ名種牡馬(その1)」に書いた私の仮説が科学的に確かなものであるとするならば、 種牡馬になったこれら各馬の成功の確率も高そうだということになるわけです。 そして、当然にお分かりと思いますが、それは父系にリンクする話ではないということであり、 これは以前「父系」で書いたことでもあります。

なお、表(※1) において○がついた馬でも、「母」が○であるのが俗に言う「良血」の度合いは群を抜いており、 次に「祖母」「きょうだい」に〇ということになるかと思います。つまり、この表において○の数が同じ馬は同じ良血度合いというわけではないのですが、 ところで、社台SSの繋養種牡馬で今年の種付料最高額(1800万円)となったエピファネイアを仮にこの表の中に入れたとしましょう。 すると、「母」に〇、「きょうだい」に〇が2つとなり、今後オーソリティがGIを勝ったならばさらに〇は増えます。 また、私が作成している母系樹形図では今世紀生まれのGI馬には下線を付し、違う種牡馬相手に複数のGI馬を産んだ牝馬は太字にしていますが、 エピファネイアの箇所は こちら のように非常に華々しいわけです。

一流が味わう寂しさ」に書いたとおり、上記のオーナーはディープインパクト産駒のアルバートドックにも惚れ込んでいる様子であり、 この馬の母ゴールデンドックエーはGI馬、さらに伯父 Unusual Suspect もGI馬であることから、 Saxon Warrior と同様に種牡馬としての期待がかなり持てそうな旨を先ほど新たに伝えたところです。 とは言え、その馬自身が最終的に保有した遺伝子や交配牝馬群の質に左右されるのも確かであり、果たして……。

(2022年2月8日記)

戻る