ドゥラメンテ産駒のGI馬の母系
GIの枠順が発表されると、競馬関連ウェブサイトの記事、テレビやラジオの解説者の発言、そしてファンの掲示板の書き込みにおいては、
外枠に入った馬には不利だとか運がないというようなネガティブな言葉が昨今は特に頻出します。
これに関する話は以前「外枠は本当に不利か?」に書きました。
そして昨日の菊花賞。その大外枠17番から飛び出したドゥレッツァが、ルメール騎手の好騎乗も相まってダービー馬のタスティエーラに3馬身半の差をつけての快勝であり、
胸がすくような想いでした。
ところで、ドゥレッツァの母モアザンセイクリッドは豪州産のニュージーランドオークス馬です。
つまり、先週の秋華賞を勝ったリバティアイランドと同じく、父はドゥラメンテ、母は豪州産のGI馬というパターンなのです。
「天下無敵のブランド(その2)」
にはディープインパクト、ハーツクライ、キングカメハメハのGI勝ち産駒の近親にどれだけGI馬がいるかの表のリンクを張りましたが、
今般、ドゥラメンテのGI勝ち産駒の状況もチェックしてみました。
現時点で総数は6であり、ドゥラメンテは既に死んでしまったのでこれから数が大きく伸びることはありませんが、
状況は こちら の表のとおりです。
また、私は今世紀生まれのGI勝馬を網羅した樹形図を作成しているのはご存じのとおりですが、これら各馬のその樹形図のリンクを以下に張ります。
なお、樹形図中の下線を付した馬が今世紀生まれのGI馬、太字は違う種牡馬を相手に複数のGI馬を産んだ牝馬です。
タイトルホルダー
スターズオンアース
シャンパンカラー
ドゥラエレーデ
ドゥレッツァ
リバティアイランド
以上のとおり、6頭中4頭が母方直系近親(=母か祖母)にGI馬がいます。
生体におけるエネルギーの生産工場たる細胞内小器官のミトコンドリア中のDNA(遺伝子)は母からしか授からない「母性遺伝」の様式を取ることなどから、
私は母系の重要性を説いていますが、上記の表で〇がついていない馬でもタイトルホルダーの場合は、
あの極端に小さな馬体ながらも力走を見せる半姉のメロディーレーンの姿から、母メーヴェの血の底力をなんとなく感じてしまいます。
シャンパンカラーも、近親とは言えないまでも祖母の半妹にジュエラーの名が見えますし、伯母に英GUの勝馬がいます。
ドゥラメンテ産駒でJpn1の勝馬にも目を広げるなら、JBCレディスクラシックを勝ったヴァレーデラルナがおり、この母セレスタもアルゼンチン産のGI馬です(こちら)。
「巨大な自転車操業」と題したものは(その1) (その2)と書きました。
また、拙著『競馬サイエンス 生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門』の第4章(母性遺伝)でも「巨大な自転車操業」
という小見出しで始まる箇所(こちら)に同様の話を書きましたが、あらためてそこに書いたことを想起してしまうのです。
確かに、鳴り物入りでスタッドインした種牡馬でも、どんなに名牝と交配しても優秀な産駒をあまり出せずに名が消えていった種牡馬はたくさんいるでしょう。
そういう意味では、ディープインパクトにしてもドゥラメンテにしても、これだけ優秀な産駒を輩出しているのですから、名種牡馬であることには間違いはありません。
けれども、先週の秋華賞、昨日の菊花賞とドゥラメンテ産駒がGIを連勝したことで、
もっぱらこれらはその父の功績かのような言説が依然として多々流れるのにはついつい違和感を覚えてしまうわけです。
先月の札幌2歳Sで1番人気になり6着に敗れたドゥラメンテ産駒のガイアメンテ。
その母ミュージカルロマンスはBCフィリー&メアスプリントなどのGIを2勝した米国産の名牝であり、実は仲間内のPOGにおける私の指名馬なのです。
次走は来月の東京スポーツ杯2歳Sを予定しているとのことですが、果たして結果はどう出るでしょうか。
(2023年10月23日記)
今日のスプリンターズSをドゥラメンテ産駒のルガルが勝ったので、上記の表に こちら のとおりこの馬を加筆しました。
ルガルには〇は付きませんが、4代母が こちら や拙著(こちら)
でも言及した Miesque であることが感慨深いです。
(2024年9月29日追記)
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