2024年セレクトセールの落札額3億円以上の馬の母系(その2)
今回は 前回 の続きで、過日のセレクトセールで3億円以上で落札された当歳馬の母系について解説します(丸数字は前回からの通し番号)。
Fセリエンホルデの2024
昨年は半兄のセリエンホルデの2023(父エピファネイア)が3億円で落札されましたが、
今年は半弟(父キタサンブラック)が4億1千万円で落札され、当歳の落札最高額馬となりました。
昨年の こちら のHに書いたことの繰り返しとなりますが、
母セリエンホルデはドイツ産の独オークス馬で こちら の樹形図の黄色であり、つまりシュネルマイスター(父 Kingman)の半弟となります。
この母系はいま非常に注目であり、拙著の「第4章 母性遺伝」の「ドイツの血筋」と題した小見出しで始まるくだりにはこの母系の樹形図を掲載しましたが(こちら)、
先にリンクを張った最新の樹形図には、緑色で示した今年のディアヌ賞(仏オークス)の勝馬 Sparkling Plenty を加えています。
ドイツでは馬名の頭文字を母親と同じにするルールがあり、この母系は俗に「Sライン」とも呼ばれており、日本で血統登録を受けた馬も頭文字を「S」にしていることには気概を感じます。
そして、セリエンホルデの2023に続いてこの2024も同じ落札者であり、このオーナーは所有馬に一定の冠名を付してはいないようなので、
ぜひとも両馬ともSから始まる名前にしてもらいたいです。
Gカリーナミアの2024
当歳の高額落札2番手(3億7千万円)は父エピファネイアで、母は こちら の黄色の米GIエイコーンステークスの勝馬。
ご覧のように周囲に名があるGI馬たちは南米産がほとんどです。
ちなみに、その樹形図中の ★(7-3-1) と記した箇所の続きは こちら ですが、
特に下の方はアルゼンチンのGI馬が密集しており、バラダセールはサトノフラッグやサトノレイナスの母です。
Hカレドニアロードの2024
当歳の高額落札3番手(3億円)は父コントレイルで、母は こちら の黄色のBCジュヴェナイルフィリーズの勝馬。
ちなみに昨年のセレクトセールでは全姉であるカレドニアロードの2023が1億2500万円で落札されています。
初年度産駒が来年にデビューするコントレイルは、こちら にも書いたように交配相手はカレドニアロードのような輸入名牝が多数であり、
今般の落札馬たちが確実にコントレイルの株を持ち上げることができるかというところでしょう。
Iアーモニーズエンジェルの2024
上記Hと同額の3億円で落札のこの馬は、父 Gun Runner の持込であり、母は こちら の水色。
つまり、ご覧のとおり、前回 に紹介したDと同母系です。
今年2月に書いた こちら では、昨年の10〜12月に輸入された繁殖牝馬は126頭、そのうちGI馬は33頭、
GI馬を既に産んでいる馬は3頭と書きましたが、アーモニーズエンジェルはこの3頭のうちの1頭であり、
初仔として米GIアーカンソーダービーの勝馬 Angel of Empire(父 Classic Empire)を産んでいます。
以下余談
マカヒキの初年度産駒たるデロングスターの2024が、1億5千万で落札されたのは驚きました。
落札者はマカヒキのオーナーであった金子真人氏であり、何か感ずるものがあったのでしょうか。
この母系を見ると、落札馬の3代母にGUを勝っているカチバがいますが、我が樹形図では、
10代母の Desert Sun(こちら の水色)がようやく出てくる程度です。
仮に今般落札されたこの馬を含めてマカヒキの産駒がそこそこの活躍を見せたなら、現在は50万円という種付料は急上昇するでしょうね。
ディープインパクト産駒の種牡馬ということでは、キズナとコントレイルがとりあえず現在のサークル内の二枚看板の様相ですが、
もしかしたらそこに迫るなんてこともあるかもしれませんよ。5年後、10年後の種牡馬の人気勢力図など誰もわからないのです。
ちょっと前までは誰もが、社台SSの種付料トップの種牡馬2頭がブラックタイドの仔と孫だなんて想像もしなかったように。
それにしても、もしも金子氏が今般落札したこの馬がGIを勝つなんてことがあったなら、こちら にも書いたように、
金子氏(およびその周囲)の眼には特別なものがあると思うのが筋かもしれません……。
(2024年7月20日記)
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