バイアスのかかった遺伝子プール(その13)
今回は「バイアスのかかった遺伝子プール(その12) 」の続編です。
生産者等の関係者に頒布されるサラブレッド血統センター発行の『スタリオンレヴュー』の2025年版を先週頂戴しました。
ここには昨年の各種牡馬の全交配相手がリスト化されているのですが、これを眺めるうえでちょっとだけ注意すべきは、
或る繁殖牝馬Xが種牡馬Aと交配して受胎せず、あらためて種牡馬Bと交配したような場合に、
種牡馬Aのリストにも種牡馬Bのリストにも、この繁殖牝馬Xの名が掲載されているのです。
例えばロザリンド。イクイノックスのリストには こちら のとおり、
キタサンブラックのリストにも こちら のとおり、その名があります。
これは気をつけるべき点ではありますが、いずれにしてもその交配がなされたのは確かであり、このデータをベースに以下を記します。
社台SSの今年の最高種付料2000万円トリオたるイクイノックス、キタサンブラック、キズナの当該リストにおける輸入牝馬(持込馬とおぼしき牝馬を含む)の占める割合を調べてみました。
結果は以下です。
イクイノックス 122/203 = 60%
キタサンブラック 128/191 = 67%
キズナ 129/218 = 59%
全て過半数です。その輸入牝馬群の名を眺めると、GI馬の名も少なからず散りばめられておりました。
ふと思ってしまったのですが、こちら や こちら や こちら
に書いたクワイトファインに、もしもこのような牝馬群をあてがったなら、そこからも多くの活躍馬が出てくるような気がしてならないのです。
さらに、内国産牝馬(持込馬とおぼしき牝馬を除く)との配合において、サンデーサイレンスのインクロスとなっている割合を調べてみました。結果は以下です。
イクイノックス 71/81 = 88%
キタサンブラック 49/63 = 78%
キズナ 52/89 = 58%
キタサンブラックとキズナはサンデーの孫ですが、イクイノックスは曽孫でもあるためか9割近くにのぼります。
ちなみに、このイクイノックスの相手の71頭中にはショウナンアデラがおり、その配合の5代血統表は
こちら になります。
「バイアスのかかった遺伝子プール(その4)」や拙著の こちら
に書いた誤解が依然として蔓延している様子であり、ネットケイバのサイトが現在のプログラムを修正しない限りは、
イクイノックスとショウナンアデラの配合で生まれてきた仔は「ブラックタイド、ディープインパクト 37.50% 3 x 2」のように表記されてしまうのでしょう。
参考まで、こちら のワイズメアリーという馬のネットケイバの血統表をご覧ください。
ところで、今年の社台SSのカタログの表紙は こちら のとおりドウデュースでした。
これは、この馬に対する社台Gの期待の表れでもあるでしょう。
こちら は
『週刊Gallop』の編集長であった鈴木学さんが昨秋の天皇賞後に書かれた記事ですが(私の名も登場)、
そこに「ノーザンファームの関係者はそろって『いい種馬になるね』と笑顔」とあるように、ドウデュースが華麗に先頭でゴール板を通過した瞬間に、
ノーザンファームのスタッフが種牡馬としての期待の言葉を交えた歓喜の声を上げていたと聞きました。
(その12) の冒頭にも書いたように、社台Gが保有する輸入名牝群がどのようにトップサイヤーたちに割り振られるかにより、
のちの生産界に深い意味を持つ可能性があります。新たな期待の星たるドウデュースの場合、今年の交配相手のラインナップはどのようになってくるのでしょうか。
(2025年2月11日記)
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