アーモンドアイの交配相手に思うこと

アーモンドアイの最初の交配相手はエピファネイアが予定されていると聞きました。 そこで、この配合のインクロス状況を見てみたのですが、 こちら のとおり、サンデーサイレンスの3×4となります。 サンデーの3×4については、「プロダクションの深遠なる戦略」、「第4の胸騒ぎ」、 「科学的啓発の必要性(その1)」、「セレクトセールの上市馬のリストを見ながら……」 などに私の考えを繰り返し書いてきました。

ネズミ算式に増殖するサンデーの3×4について、ノーザンファームは好意的に見ているのか、仕方なしと見ているのか、それとも何とも思っていないのか、 私には知る由もありません。ただ、デアリングタクト等の活躍で来期の種付料が500万円から1000万円に倍増ということからも分かるように株が一気に上昇したエピファネイアですから、 「売れる馬」に主眼を置くマーケットブリーダーとして、天下のアーモンドアイの相手として最終的にエピファネイアに行きつくのは当然のことなのでしょう。 もしも私がノーザンファームの人間だったにしても、やはりエピファネイアを選んでしまうのかもしれません。ビジネスなのですから……。

そんなことを考えると、やはり社台SSの輸入新種牡馬たるナダルやシスキンにしても、その価値がまだ分からない段階ではやはり候補にはならないのでしょう。 アーモンドアイとこれら2頭との配合だとどのようになるかも見てみたのですが (こちらこちら)、どちらも強いインクロスはなく、 私はエピファネイアよりもこれら2頭との配合の方が段違いに好みです。 ちなみにアーモンドアイとシスキンの配合は、GI馬が溢れる母系の祖たる Best in Show の「牝馬インクロス」となり有意義だと言う人もいそうですが、 そのような発想は科学的にも意味が見出せないことは こちら に書きました。

ノーザンファームにしても、オーナーブリーダーとして自己所有なら、 アーモンドアイを含めた各名牝の交配相手についてもっと広い選択肢を持てたのだろうな……などとも思ってしまうのです。

例えば、こちら で取り上げたクワイトファイン。 もしもノーザンファームがクワイトファインのような種牡馬をアーモンドアイに選んだら (架空血統表は こちら)、 競馬サークル内では上を下への大騒ぎとなるのでしょうね。 しかし冗談抜きで真剣に私は、エピファネイアよりも、ナダルよりも、シスキンよりも、或る意味でクワイトファインの方がアーモンドアイには面白いと思っているのです!  「やばい、堀田はちょっと頭がおかしくなった……」と思い始めた方がいるかもしれませんが、 クワイトファインは こちら に書いた「隠し味」のような日本古来の血も満載であり、 また、こちら にも書いた論文の報告内容も看過できないと私は思っているのですが、いかがですか??

しかし、著名な評論家がそんなことをコメントしたら、もう寄稿依頼は来なくなるかもしれませんね。 「その交配は全く狂気ではない」に書いたように、私は、西山茂行氏がニシノフラワーにセイウンスカイを選んだことは狂気どころか、 オーナーブリーダーにおいては至極全うなことだと思うのです。

そんな中、興味深い記事 を見つけました。 ダーレー・ジャパンでは、新卒1・2年目のスタッフが、或る繁殖牝馬に対して最適な配合相手と思う種牡馬を提案するというものです。 課題として2頭の繁殖牝馬が与えられ、1頭はセリで売却する前提、もう1頭は自ら馬主として所有する前提で配合を考えるというもので、 市場に出す場合とそのまま所有する場合で配合がどう変わるのかを理解してもらうためのものとのことで、非常に奥深く意義がある試みだと感嘆しました。

マーケットブリーダーは買い手のブランド思考に常に敏感になる必要があることから、 売ることを前提にしているのか、自己所有を前提にしているのかで、配合種牡馬の選択は変わってくるものと思います。 しかし、いずれの場合にしても「強い馬」が主眼であるのは同じであることに変わりはないのも確かで、理想論かもしれませんが、 どちらが前提の場合であっても、選択すべき種牡馬には大差がないのが本来の在り方だと私は思っています。

それにしても、クワイトファインがアーモンドアイと交配して優秀な産駒が得られたならば、 その サイヤーライン残存プロジェクト は非常に盛り上がりますね。あり得ないのは百も承知ですが……。

予定どおり来春、アーモンドアイにエピファネイアが交配されれば、その仔が生まれてくるのは2022年、順調に行けばデビューは2024年ですが、 どんなに馬体や身のこなしが素晴らしくとも、私は仲間内でやっているPOGでこの馬を指名することはないでしょう。よっぽどの心境の変化がなければではありますが。

(2020年12月13日記)

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