天下無敵のブランド(その1)
一昨日の英オークスでディープインパクト産駒たる Snowfall が後続に16馬身の差をつける圧勝劇を演じました。
この Snowfall の母系の樹形図は こちら ですが、祖母の Red Evie はGIを2勝、伯母の Found は凱旋門賞を含めGIを3勝しています。
まだ余韻が残っている先週の日本ダービーですが、勝ったディープ産駒のシャフリヤールは 前回 も書きましたが全兄がアルアインで、
母ドバイマジェスティはBCフィリー&メアスプリントを勝ったGI馬です。
また、シャフリヤール以外のディープ産駒の入着馬たるグレートマジシャンとサトノレイナスの母も輸入GI馬です。
今日の安田記念で圧倒的1番人気ながら2着に惜敗したグランアレグリアの母も輸入GI馬、勝ったダノンキングリーは叔父がGI馬です。
さらに、デビュー前からかなり高い評判を受けていたディープ産駒のコマンドラインが昨日の新馬戦を単勝1.1倍で圧勝しましたが、この馬の母も米国産のGI馬です。
ここまで書くと、今回は私が何を言いたいのかを察して下さった方もいると思いますが(笑)、そうです、母系あってのディープ産駒の活躍ということで、
こちら やこちら や こちら などに書いてきた話の蒸し返しです(再笑)。
英オークスの圧勝劇にしても、もっぱらディープインパクトのお蔭のような空気に包まれていますが、
勝った馬は祖母も伯母もGI馬、特に伯母は凱旋門賞馬たるものすごい母系の馬だということが全く無視されてやいませんか?
つまりディープインパクトは、かーちゃんがいなければ何もできないとーちゃんと大差ないということなんです。
「オレと同じだ……」とディープに親近感があらためて湧いたお父さんの顔が目に浮かびます(^^
あらためて先週の日本ダービーですが、私は個人的に3着に入ったステラヴェローチェに戦前から注目していました。
昨秋は不良馬場で時計を要したサウジアラビアRCを勝った後、レースの流れが全く違ったレコード決着の朝日杯FSでは2着に入り、
オールマイティーの能力を感じていました。
共同通信杯は1頭だけ57kgを背負わせられたうえに進路が狭まり5着も、皐月賞は良い脚を使っての3着にそこそこのポテンシャルを感じていたのです。
それがですよ、ダービー当日の朝の単勝オッズは30倍もつくことに先ずは驚き、その倍率がどんどん上がっていく不思議な現象に私はツイッターで
「あら、倍率がさらに上がってる! 老眼で小数点の位置を見誤ったか??」とつぶやいてしまい、
最終的には40倍もつく9番人気という事実がその時点では理解不能でした。
後日その理由を私なりに考えてみたのですが、その不可思議に思えたオッズは、ステラヴェローチェはバゴの産駒だったからなのかもしれません。
例えばディープインパクトの産駒があのような戦績を携えて、単勝40倍の9番人気ということはありえないのではないでしょうか?
この馬の某掲示板を眺め続けてみると、「バゴは無理」といったようなコメントが繰り返されることに、
このようなオッズになるのだな……と妙に納得してしまったのです。
さらにこのステラヴェローチェに対する書き込みを見ていくと、「母の父がディープだからあの高速馬場に対応できた」のようなコメントがいくつもあるわけで、つまり、
ディープインパクトのブランドに洗脳された者たちは何が何でもそこに話を絡めてしまうのだなとちょっと虚しい気持ちになり、
そのブランドの威力は半端ではないことを痛感してしまったのです。
ブランドがまだ確立しきっていないバゴですから、その産駒が人気を裏切った場合は「やっぱバゴだから……」というネガティブなことをすぐに書かれるのですが、
その一方で、ディープインパクトのようにブランドが確立した種牡馬の産駒が人気を裏切ったとしても、「やっぱディープだから……」
のようにネガティブに言われることはありません。
ちなみに、ディープインパクト以外にブランドが確立した種牡馬というと、ハーツクライ、キングカメハメハ、ロードカナロアなどが挙がると思いますし、
新興勢力ではエピファネイアやキズナもブランドが確立した様子です。
バゴは日本軽種馬協会の種牡馬です。こちら にも書きましたが、軽種馬協会は積極的にブランド戦略には乗り出さないことからも、
社台SSの人気種牡馬と比較すると交配相手の質は劣ります。
その結果として産駒の成績に派手さはないことからバゴ自身のブランド価値も低迷し、種付料は昨年が50万円、
クロノジェネシスの活躍で値上がりした今年にしても100万円とは正直なところ驚いてしまうのです。
あくまで私見ですが、バゴのような種牡馬が社台SSにいて、当初からディープインパクトのように名牝をこれでもかこれでもかこれでもかこれでもかと用意したならば、
その種牡馬成績はディープインパクトに肩を並べたのではないかとさえ思うのです。
このように、競馬界のみならず、われわれの身の周りのあらゆる業界において、
そのブランド戦略に長けた者がそこに群がる人々の心を巧みに支配することによって市場はいつの間にかコントロールされるのです。
一昨日の英オークスの Snowfall が演じた16馬身差の圧勝劇は、巨大な杭を世界のサラブレッド市場の地盤にグイっと16馬身分の深さにまで打ち込んで、
スペシャルにエクセレントでゴージャスなディープインパクト城が、ガリレオ城と肩を並べながら建立したようなものかもしれまません。
が、私から見たら、それはしょせんバーチャルな城にすぎず、せいぜい銭湯の湯船のところの壁に描かれた富士山のようなものであり、
ディープインパクトの天下無敵のブランドの確立は、
そんな銭湯の富士山の絵が日本の名峰たる富士山の実際の映像であると世界に信じ込ませることに成功したようなものかもしれ
…………これ以上書くと本当にお叱りを受けそうで、今日はこのへんでやめておきます。
(2021年6月6日記)
「天下無敵のブランド(その2)」に続く
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