『サラブレッドの血筋』の第4版発行に向けて(その2)

『サラブレッドの血筋』の第4版発行に向けて(その1)」を書いたのは昨年8月でした。 その時からすでに1年以上が経っていること、つまり原稿作業が遅れていることを他人事のようにあらためて気づきました。

遅れている理由(言い訳?)のひとつに、中途半端な内容のものは作りたくないという想いがあり、なかなか自分の頭の中で、 論述すべきフレームワークのイメージがまとまらなかったことがあります。 そして、出版に向けて推進していく自分の気力の維持に苦労しているのも事実で、若くはない我が身は、今夏の暑さで脳細胞の活動も低下してしまい……。

拙著の内容構成は、前版(第3版)を購入くださった方はご存じですが、前半は我が論述、後半は今世紀生まれの全世界のGI馬を網羅した母系樹形図としています。 まあ、ページ数全体から見ればこの母系樹形図が大半を占めており、樹形図こそが拙著の存在価値と言っても過言ではありません。 初版と第2版は父系の樹形図も掲載していましたが、「父系」にも書いたとおり、 サラブレッドの能力を血統的背景から探究するうえで、父系を持ち出すことは科学的に無理があると考えており、第3版以降の掲載樹形図は母系のみとしました。

論述の構成はちょっと考え直し、現時点で以下を考えています。

第1章 母系の意義
第2章 近親交配の功罪
第3章 求められる遺伝学的視点
第4章 今後の生産界
第5章 メディアの使命

拙著の海外からの受注に際し思ったこと」にも書いたとおり、第3版は海外からもかなり購入いただき、 今後も国内外を問わずに伝えるべきと思うことを精力的に発信せねばと思っています。 なお、第3版までは和英併記で作成しており、ページ数が多い冊子となっていました。 和文版と英文版の分冊はコスト高になってしまうためでしたが、しかし和文しか(または英文しか)目を通さない方には英文部分(または和文部分)は当然に不要だったでしょう。 そんな中、有難いことにようやく拙著もそこそこ名が通ってきており、第3版以上の数はさばけるのではないかとの捕らぬ狸の皮算用に基づき、 印刷発注総数を増やせば1冊当たりの製本単価を少し下げられそうだと見込んだことから、第4版は分冊作成することにしました。

拙著のタイトル「サラブレッドの血筋」のサブタイトルは、前版は「偉大なる母の力」でしたが、今版は「深遠なる母の力」を考えています。 ちなみに辞書で「深遠」という言葉の意味を調べると、「奥深くて容易に理解が及ばないこと。また、そのさま」とありました。 いま、上記第1章を頑張って書いているのですが、その「深遠」の言葉の裏づけのために、 ミトコンドリア自身が内包するDNA(遺伝子)は母親からしか授からない「母性遺伝」をするメカニズムに関する科学的報告をいろいろと検索しています。 例えば こちら がヒットしたのですが、 これの論文は こちら のようです。 ミトコンドリアのDNAは母親からしか授からないことはかなり前からわかっていましたが、その具体的機序が徐々に解明されつつあり、 父親由来ミトコンドリアにおけるオートファジー(自食作用)に、特定のタンパク質が関与しているようです。

ところで、先日の英セントレジャーを勝った Jan Brueghel は Galileo 産駒の101頭目のGI馬です。 「天下無敵のブランド(その2)」には、 ディープインパクト、ハーツクライ、キングカメハメハの産駒のGI勝馬における近親にはどの程度GI馬がいるかを論じましたが、 上記第1章ではこれに加えて Galileo 産駒のGI勝馬の近親についても論じます。 ちなみに こちらこちら は、Galileo のGI勝ち産駒の近親の状況を一覧化した表からの抜粋です。 作成途上なので、まだ抜けがあるかもしれませんが、これを見ると、スタッドイン直後のGI勝ち産駒の母系はそれほど派手ではないものの、 晩年のGI勝ち産駒は母がGI馬のパターンが多く、また〇の数も相対的に多く、かなり派手な印象です。 「Galileo ブランド」の確立後は非常に多くの名牝を相手にしたのではないでしょうか。このあたりについても第4版で論じれればと思っています。

なんとか来春には発行できるように、ネジを巻いていきます。

(2024年9月25日記)

第4版に掲載する母系樹形図は、こちら に書いたとおり、フォントサイズを縮小します。 文字は小さくなりますが、樹形図の「こま切れ」や無駄な余白も少なくなり、スッキリ見やすくなります。

(2024年9月26日追記)


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