『サラブレッドの血筋』の第4版発行に向けて(その1)
我が自費出版本の『サラブレッドの血筋』ですが、前版の第3版を発行したのが一昨年(2021年)の3月ですので、2年半近くが経ちました。
その間に、治郎丸敬之さんが編集長の『ROUNDERS(vol.5)』に「サンデーサイレンスのインブリーディング配合急増に関する一考察」と題したものを寄稿したり、
そしてご存じのとおり、過日は『競馬サイエンス 生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門』(星海社新書)を上梓しましたが、
タイミング的にこれらは前版を発行後に執筆依頼を頂戴したので、原稿作業が並行することなく幸いでした。
そして、やはりそろそろ次版(第4版)の制作の準備にかかろうかと思っています。
まずその発行タイミングですが、その内容のメインとも言える今世紀生まれのGI馬を網羅した母系樹形図は、2024年末までのGIの勝馬を網羅して、
2025年の春ごろにと最初は思っていました。
しかし、遺伝的多様性の低下を惹起する血の偏りは世界的に加速度を増しており、この話は遅滞なく継続的に議論していきたいことからも、
母系樹形図については2024年6月末までのGIの勝馬までとして、同年秋ごろに発行のスケジュールで動いてみようかと思い始めました。
いずれにしても、私が継続探究している以下が、次版においても大きな論点になります。
@近親交配(その多発に伴う遺伝的多様性の低下)
A母系の重要性
例えば、「Galileo の血に埋没する欧州」に書いた論点はまさしく@に関するものです。
先日の愛オークスを勝った Savethelastdance は、Galileo 産駒としては98頭目のGI馬となりますが、100頭近いこれらの母系の状況を、
「天下無敵のブランド(その2)」の中にリンクを張った こちら
のディープインパクト産駒の母系状況リストのようにまとめてみる予定です。
さらには、近年の欧州主要レースの出走馬における Galileo の血の席巻状況なども掲載したいと考えています。
が、これらの膨大なデータを抽出してまとめるのは、時間も労力も並ではないはずであり……。
Aについては、母性遺伝をするミトコンドリアの遺伝子ですので、それと運動能力との関連に言及した新たな書物や論文が見つかれば当然に紹介したいですし、
アップデートした我が母系樹形図を用いて、複数のGI馬を産む牝馬の多さ、その中でも、違う種牡馬を相手に複数のGI馬を産む牝馬が思った以上に多い話を、
最新のデータを示しながら書く予定です。そして、最近の要注目の母系などもピックアップしてみたいと思います。
また、過日上梓の拙著で書いた「遺伝の仕組み」「科学と血統理論」「サイエンスコミュニケーション」などについてもあらためて記述できればと考えますし、
「完全な血統書など存在しない」(その1)、(その2)、(その3)、(その4)、(その5)
に書いたような話も盛り込もうかな、などとも思い始めております。
以上はあくまで現時点での大まかな構想ですので、予定どおり行くかはわかりませんが、「次の版はいつ出るのですか?」という嬉しい照会も頂戴していることからも、
気力と体力を維持しながら頑張らねばと身を引き締めます。
(2023年8月1日記)
「『サラブレッドの血筋』の第4版発行に向けて(その2)」に続く
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