バイアスのかかった遺伝子プール(その3)
「バイアスのかかった遺伝子プール(その2)」の続編です。
この話をまた書くのは自分でもかなりしつこいと思っています。
関連する話では、例えば「近親交配(インブリーディング)とは何か?」と題したものを8回、
「遺伝的多様性の低下に対する米国の方策」と題したものも7回ほど書いてきました。
しかし、私のような知名度の低い者が一念岩をも通すには、これでもかこれでもかこれでもかこれでもかと繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し言い続けるしかないのです。
2年前に書いた「第4の胸騒ぎ」では、『Gallop臨時増刊 丸ごとPOG 2020〜2021』の中にあった、
社台系のクラブたる「サンデー」「キャロット」「シルク」「社台」「GI」
の2歳馬リストに掲載されていた主要種牡馬の産駒における3×4以上のインクロスを持つ馬の数(割合)を掲載しました。
そして今年も仲間内のPOGのために『Gallop臨時増刊 丸ごとPOG 2022〜2023』を買ってきたのですが、あらためてそこに載っている
「サンデー」「キャロット」「シルク」「社台」「GI」の2歳馬リスト中の産駒のうち、
エピファネイア、モーリス、リオンディーズというサンデーサイレンスの曽孫(ひまご)種牡馬の産駒における、
サンデーサイレンスのインクロスを持つ馬の数を調べてみました。
結果は以下です(分母は総数、分子は該当数)。
エピファネイア モーリス リオンディーズ
サンデー 3/4 5/5 2/2
キャロット 6/6 7/8 1/1
シルク 5/6 7/7 3/3
社台 4/6 2/2 0/0
GI 1/1 3/3 2/2
19/23 24/25 8/8 ⇒ 51/56
つまり56頭中の51頭(91%)もがサンデーのインクロス持ちです(2×4は2頭、3×4は46頭、4×4は3頭)。
この数字は哀しいかな予想どおりではありますが、しかしこれが日本の主要一口馬主クラブにおける包括的な数字だということに、
なんとも不思議な気持ちになってしまうのです。
昨年スタッドインしたばかりの同じサンデー曽孫のサートゥルナーリアの数字も「バイアスのかかった遺伝子プール(その2)」
に書いたとおりですが、日本の競馬界は、本当にこれを野放しにし続けるのですか?
競馬関係者の大半は、「純血種という病」に書いた犬や猫のブリーディングの実態は別世界のことだと思ってはいませんか?
「民法第734条」にも書いたように、人間のみならず動物でも一定の歯止め(規制)が必要だということにそろそろ気づこうではありませんか。
エピファネイア産駒の大半はサンデーサイレンスの3×4のインクロス持ちです。屈腱炎を発症したオーソクレースも当然にその1頭であり、GIタイトルもないことから、
サンデーの血であふれている日本において種牡馬としての受け皿があるのか心配していたところ、トルコで種牡馬入りするとの発表があり、非常に喜ばしく思ったところです。
そんな中、「トルコの血筋」に書いたトルコの生産者から連絡があり、なんとオーソクレースを購入したのは彼の友人とのこと!
ご存じオーソクレースの母はGI馬のマリアライトであり、「名牝を母に持つ名種牡馬(その1) (その2)」
に書いたような理由から、そしてトルコではサンデーの近親交配のリスクはほぼないことから、現地で優秀産駒をたくさん出すのではないかと非常に期待しています。
これを書いているたったいま、この生産者からオーソクレースのレース動画が見たいと再度連絡が入ったので、いくつかのサイトを教えてあげました。
その一方で、同じエピファネイア産駒のサンデー3×4たるエフフォーリアは引退後に他国に売却することはないでしょうから、
日本で種牡馬になったらその配合相手はどのような様相になるのかと考えかけたのですが、ちょっと眩暈(めまい)がしてきたので、やめます……。
(2022年5月1日記)
「バイアスのかかった遺伝子プール(その4)」に続く
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